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生徒との対話(2)−ある保護者からの誹謗中傷による生徒達の疑問に答えて
 生徒達の感想、意見プリントの中で、私がアンダーラインを引かせた箇所と私のコメント(生徒との対話(1)−ビデオを観て参照)をある母親が「反米偏向教育」という誹謗中傷によって干渉し、生徒が巻き込まれてしまい、生徒への説明が必要になったため、第2回目の紙上討論に当たって作成した教材

■『ビデオ「沖縄の米軍基地...普天間第二小の場合」(NHK福岡)の感想文を読んで考える

先生から生徒達へ

 あなた達の親の一人が「増田先生は,けしからん教育をしている」というような内容の電話を教育委員会にしたようです。誰なのか分かりましたので電話しました。その親は、この前のみんなの意見を載せた「ビデオ 沖縄の米軍基地...普天間第二小の場合」のプリントをファックスで教育委員会に送ったら教育委員会の人が「『増田をクビにしたいけど中々できない』と言っていた」と口惜しそうでした。で,教育委員会の人に確認したら「そんなことは言ったことがない」...あれれ?
 では,その親にとって,どこが「けしからん」かと言うと,「先生から〇〇さんへ」というところが特に「先生の思想」が出過ぎていて、「偏っている」ので,悪いんだそうです。教育委員会に密告(若者スラングで言う『チクリ』)電話や密告ファックスを送るというクラーイ情熱やエネルギーには敬意を覚えますが,私はこの親の要望に添うわけにはいきません。公務員の第一の義務は憲法尊重擁護であり,教育公務員の憲法である教育基本法は「この(憲法の)理想の実現は教育の力にまつ」と言っているように,「学校の先生」は憲法の思想をしっかりと生徒達に伝えなければなりません。当然,私のコメントは徹底して憲法の思想と,それに反するものとを生徒達に知らせることになります。生徒達は「知る権利」がありますから。この親は「憲法の思想に反するものの事実」についてコメントするのを特にいやがって,やめさせたいようですが,「事実」をきちんと教えている私を「偏っている」と言うのは,この親が「偏っている」証拠です。日本国憲法主義者である私を「偏っている」と言うのは,日本国憲法を「偏っている」と言う人です。生徒達は先ず「事実」を知らねばなりません。私のコメントは,すべて事実です。「事実」を知らなければ誰でも「正確な判断」は,くだせません。この親は「沖縄の人はかわいそうだが,米軍は,沖縄の人以上に大切なのでしかたない」という思想の持ち主のようですが,自分の偏狭な(若者スラングで言う『セコイ』)「思想」は絶対、正しい、『自分こそ絶対、中立だ』と思い込むのは自由であっても,あまりにも非常識な教育内容への介入は許しません。親の自分の「思想」が教師の「憲法に忠実な思想」と合わないからと,教師の教育内容に介入しようなど笑止千万な,あまりにも「アサハカな思い上がり」と言うべきです。この親は自分は多数派であると思い込んでいるようです(実際にそうなのかもしれません)が,真理や真実、人権問題は多数決で決まるものではありません。
 私は長男が小学校のとき、担任の先生の言葉に疑問を持ったことがあって,その先生と話し合いをしました。教育委員会に密告して教育委員会の圧力でやめさせようとか,クラスの緊急連絡網をまわして圧力をかけよう(まともな判断力のある親なら驚いたでしょう)なんて夢にも思いませんでしたが,長男には次のように言いました。「お母さんは先生とは違って,こういう意見だけど,お前は、どちらが正しいか,よく自分で考えてね」
 また、この前のプリントの最後で沖縄の反戦地主の島袋さんの意見を紹介したのですが、その親は「他の教師を批判をするなんて」と,お気に召さない様子でした。島袋さんは「先生はクビになるのを恐れず,しっかり憲法や真実について教えるべきだ」と言っていましたね。私は自戒の意味も込めて「私は,しっかり教えます」と,みんなに言いました。こういう親に脅えて(若者スラングで言う『ビビって』),そうできない先生もいることを,この親は知っているから,こんな攻撃を仕掛けてくるわけでしょうが,私に脅しは通じません。
 こういう親の存在をここに明記するのは,「これが,あなた達の生きている社会の現実である」という絶好の「教材」を,この人が提供してくれたからです。社会科の究極の目的は、テストでいい点を取ることではなく(もちろん点数は,いいほうがいいけれどネ)「今、自分がどんな社会、どんな矛盾を持つ社会に生きているか知り,より良い社会を作るために自分はどう参加していくか」を考えることにあると,私は思います。ですから私は、これからもしっかり、あなた達が生きる現代及び過去の日本社会の事実と、それが日本国憲法にとって,どういう意味を持つか,ということを教えていきます。「事実を教えさせたくない親」がいるという事実は,とっても大切なことですから,事実をしっかり知った上で、「なぜ、事実を教えさせたくない親がいるのか」よく考えてみてください。