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■韓国釜山(プサン)での講演内容 |
私は33年の教員生活の間、生徒達に「女は度胸! 男は愛嬌!(女性は大胆で肝っ玉が太いのが魅力的! 男性は、自己主張せず、いつもニコニコ愛想良くするのが魅力的!)」と教えてきました。 これは、実は本来は反対の意味の言葉なのです。「男は度胸! 女は愛嬌!(男性は大胆で肝っ玉が太いが魅力的! 女性は、自己主張せず、いつもニコニコ愛想良くするのが魅力的!)」と、女性差別のニュアンスが濃いのです・・・韓国にも、こういう言い方があるでしょうか? 私は、それを逆に教えていたのです。でも、ここ10年くらいは、全く、こういうことを教える必要がなくなりました。 教えなくとも「度胸」のある女の子達ばかりになったからです!? そこで、私も、生徒達に教えてきたことを自ら実行して、「度胸」を持って皆様に日本の東京の教育界の現状・・・それは、もちろん、現在の日本社会の現状ということになりますが・・・を話したいと思います。 先ほど私は「教員をしていました」と過去形で言いました。しかし、私は、教えることがイヤになったから自らの意志で退職したのでも、定年になったから退職したのでもありません。定年までは、あと4年ありました。私は東京都教育委員会によって教員であることを「やめさせられた」のです。解雇されたのです。 日本の学校の1年の最後の日は3月31日(韓国では2月28日でしょうか)ですが、勤務時間終了から1時間かかって千葉県にある自宅に帰り、午後6時45分に郵便受けに入っていた東京都教育委員会の「封筒」を開封したら「免職処分」の紙切れが入っていました。 さて、私は、どんな悪いことをした教師なのでしょうか? 皆さん、私が悪いことをするような教師に見えますか? 見えませんよね!? 皆さんの、人を見る目は、正しい! では、なぜ、東京都教育委員会は、私を「教師不適格」として「免職処分」などにしたのでしょうか? それは、去年のノ・ムヒョン大統領の3・1演説を授業の教材として取り上げ、生徒達に手紙を書かせ、私も手紙を書き、それをまた、教材にして授業をしたことが原因でした。 「真実と誠意を持って、両国の国民間を塞いでいる心の障壁を崩し真の隣人として生まれかわ」るためには、日本人は、何をしていかなければならないかを生徒達とともに考えました。そして生徒達の大統領への手紙を読めば、生徒たちは「真の和解のためには何が必要か」を良く理解したと思います。 ここで、私の「紙上討論」授業について説明します。 私は1973年、東京都の中学校社会科教員に採用されて以来、日本の平和憲法の下、過去の侵略の歴史への反省や、平和と民主主義の大切さを教えることに努力してきました。そして、生徒たちの創造力を伸ばすために「紙上討論」という授業方法を授業の中に導入しました。 ところが、この「紙上討論」を敵視したのは、東京都教育委員会、都議会の右翼都議、「産経新聞」そして一部の右翼的保護者です。 私の授業によって、生徒たちが侵略と植民地支配の過去を心から反省できるようになり、平和が尊重される社会、人権と民主主義が実現する社会を目指していくようになって、それに反する政治を批判するようになることを恐れたからだと思います。 都教委や右派が、いやがった・・・もちろん、正直にそんなことを彼らが言葉で言ったわけではありませんけれど・・・生徒達の意見を少しご紹介します。 ●私は中国の反日感情(韓国の人の反日感情は、つい、最近、歴史を学んで知りました)が、なぜ、あそこまですごいのかも不思議でした。でも、歴史を学んでいくうち、中国・韓国の人たちには、謝りきれないようなことをしてきたことが分かってきました。 そして、歴史の教科書には、中国・韓国の人たちに日本がしたことが軽く触れる程度にしか書かれていないこと、増田先生が教えてくれなければ、自分で書店に行って本や資料を買わない限り、侵略の内容が分からないことに驚きます。同時に、私は日本政府の人たちは、頭、悪いんじゃないか? と思いました。なぜなら、本当に賢い人は『真実を、きちんと徹底的に教える』と私は考えるからです。皆さんは、どう思いますか? ●なんで、真実を子どもたちに教えないのですか? 日本が過去に行ったアジア侵略という悪いことは、まぎれもない真実ですよね? それを隠してどうなるんですか? 私は歴史は好きだけど、時々「なんで昔のことなんか分かんなくちゃいけないの? 『今』生きてるんだから、『今』のことが大事じゃん?」って思ってました。でも、増田先生の授業で、昔、日本がアジアでしたことをビデオで見て、最初は「気持ち悪い。なんで、こんなの見なくちゃいけないの?」って思ってました。けど、日本が過去にやったことをきちんと認めて、私たち子どもに教えてくれることで、少しは、「あんなことはもう二度と起こしてはいけない」と子どもたちが思うようになるのでは? と思います。その気持ちを持つだけでも大切だと思うので、やっぱり、日本に都合の悪いことでも真実を教えるべきだと、私は思います。 ●ノ・ムヒョン大統領へ。私は、今まで、日本の、本当の歴史を知りませんでした。しかし、この一年間、増田先生の授業を受け、本当に、日本がアジアでしたことを知り、初めはショックでした。しかし、これらの事実は、これからの日本の未来を作ってゆく中学生の責任として、きちんと見つめ合っていかなければいけない問題なのだと思います。 ●今の僕たちが生まれる前の話だけど、朝鮮の人々が起こした三・一運動の原因を作ったのは我が日本人だった。日本人が、自己の利益のみの目的で勝手に他国を侵略してしまったことを、すごく残念に思う。とても悲しいわが国の歴史の一つである。さらに悲しいことは、日本人が何十年たった今でも、過去の過ちを認めず、『本当の謝罪』をしていないこと。これは一番いさぎ悪く、とても失礼なことだと思う。現在、日本では、日本が朝鮮の人々にした拉致などに比べれば少数の日本人を拉致され、大きな問題として受止めるのも大切だけど、何十年も前に日本人が、殺したり、精神的に傷を負わせた朝鮮の人たちへのざんげを今一番必要としていて、日韓両国の関係、『真の和解』を回復することが大切だと思う。隠し事はよくないと思う。 ● 私は、韓国の人たちは、日本のことを、あまり良く思っていない、と思っていました。日本は朝鮮を植民地支配など、韓国の人々に対して、とてもひどいことをしていたからです。日本人も拉致問題などでつらい思いをしているけれど、韓国の人たちは、それ以上に傷ついていたのだと思います。でも、この演説を読んで、韓国の「国民もフランスのように寛大な隣人として、日本と共になりたいという願いがあります。」と思っていてくれたことを知り、少し嬉しかったです。そして、日本と韓国を、これから良い関係にするために、日本は韓国にきちんと謝るべきだと思います。文化の交流もさかんになってきているので、これを進めていって、お互いの国の仲がよくなるといいと思います。 ● 私は「手紙」というと書きにくいので、素直な感想を書きます。とにかく、この演説を読んで分かったことは、韓国の人は、ただ反日感情を持っているだけではない、ということです。演説の中に「私は拉致問題による国民の怒りを十分に理解しています」という文がありました。これを読んだ瞬間、なんだか、韓国国民の抑えた怒りを無視しているような感じの日本が恥ずかしく思えてきました。日本はなぜ、素直に過去の悪いことを認めて反省することができないのか分かりません。 さて、この紙上討論プリントを、自分の子どもから出させて読んだ靖国神社関係者でPTA副会長の一人の父親が、都教委にこれを「偏向教育」として送付したことから「事件」となったのです。彼は、現在も、戦前の皇国史観論者として有名な学者の信奉者です。 都教委は飛びついてきました、私の大統領宛手紙に以下のような文面があったからです。 『情けないことではありますが、04年10月26日の我が東京都議会文教委員会において、古賀俊昭という都議会議員(自民党)は言っています。「(日本の)侵略戦争云々というのは、私は、全く当たらないと思います。じゃ、日本は一体どこを、いつ侵略したのかという、どこを、いつ、どの国を侵略したかということを具体的に一度聞いてみたいというふうに思います。」(文教委員会議事録)などと、国際的には恥を晒すことでしかない歴史認識を得々として嬉々として披露しているのが我が日本国の首都の議会なのです。 というより、大いに共鳴しているのでしょう。侵略の正当化教科書として歴史偽造で有名な扶桑社の歴史教科書を「生徒たちに我が国に対する愛国心を持たせる一番良い教科書」などと公言して恥じない人たちですから。 古賀都議その他の歴史偽造主義者達が「日本は一体どこを、いつ侵略したのかという、どこを、いつ、どの国を侵略したかということを具体的に一度聞いてみたい」なら、「一度」韓国独立記念館や南京大虐殺記念館に行ってみたらいいのです。「具体」例が、「聞いて」みるまでもなく眼前に展開しています。「歴史を反省しない国」と他国の人から言われることは屈辱ではありますが、残念ながら「そんなことはありません」と言い切れぬ現実があり・・・』 この部分が「特定の公人名を挙げ」「特定の出版社名を挙げ」ているから「不適切」で「地方公務員法で禁じる信用失墜行為」であるとして、私は05年8月30日付で昇給延伸処分を受け、同年9月1日付「長期研修命令」で学校から追放されたわけです。 その「研修」の中で、私に対して『指導』と称して行われたことは「ビデオ『侵略』を授業で見せるな」とか「検定済み教科書は全て正しいのだから扶桑社教科書を批判したことを反省せよ」というものです。 「ノ・ムヒョン大統領の演説の全文を載せた教材プリントを生徒に配布し、ノ・ムヒョン大統領に手紙を出す、といった教育を行った理由及び教育公務員としてのあなたの考えについて述べなさい。」というのもありました。 これは「大統領の手紙を教材にして授業したことを『悪い授業をした』と反省しろ」というものなのです。 これは、もう、教育内容・思想信条にズカズカと踏み込むものです。日本が本当に民主主義の法治国家ならば、このようなことは許されるはずもないことなのです。 ですから、私は長文の報告レポートで反論し、教育内容への介入や歴史認識改変強要を断固として6ヶ月間、拒み通しました。その結果、正しい歴史認識・教育内容を、誤った歴史認識・教育内容に改めないことを「反省がない、改善が見られない」として都教委は私を解雇したのです。 ●何で増田先生がクビなんですか?! おかしいじゃないですか! なんで○○君のお父さん一人の苦情で増田先生がこんな目にあわなきゃいけないんですか? 都教育委員会はどうかしてます! 石原慎太郎はなにしてるんですか? 先生の教育のどこが悪いんですか? 正しいことを教えようとしているのに! 過去の過ちを認めないどころか肯定しようとする都知事を、どうして都民は支持するのでしょうか? みんな騙されているだけです! もっと、この問題が大きくなれば、都民も都知事のバカさかげんがわかるでしょう。僕は応援しつづけるので、これからも頑張ってください。 ● 先生の免職処分の話を聞いて本当にびっくりしました。教育委員会は生徒の何を基準に先生を『悪い先生』と決め付けているのかよく分かりません・・・。
●紙上討論は、文章が苦手な私にとっては、とても辛いものでした。戦争や原爆のビデオを見たりして涙したこともありました。でも、そのときは大変でも、今、振り返ってみると、紙上討論のおかげで、自分の意見が言えるようになり、友達の考えを知ることができました。あれらのビデオを見たおかげで、教科書では学べない真実を知ることができました。増田先生の授業で無駄になったことは一つもありません。一年半という短い期間しか授業を受けられなかったのは、とても残念ですが、この貴重な体験を大切にし、将来、自分の子どもにも真実を教えられる先生のような人間になりたいと思います。いろいろと大変だろうと思いますが、どうか御体に気をつけて元気で頑張ってください。 しかし、もちろん右派メディアの代表的新聞や週刊誌である産経新聞とか『週刊・新潮』などは『とんでもない偏向教師をやっとクビにできた。よかった、よかった』と大喜びの記事を流しました。そして日本では右派以外のメディアの新聞やテレビは、私がどんなに取り上げてくれるように訴えても『黙殺』することによって右派を助けています。 韓国では今「竹島問題, 小泉首相の靖国神社参拝問題, 歴史教科書偽造問題等」で日本の軍国主義化に危惧の念を持っていらっしゃる方が多いかと思います。これらに対しては、私は『日本は歴史を反省しない国』と自ら証明してしまったものである、と本当に情けなく、恥ずかしく思っています。 歴史の事実を教えるという当たり前のことをし、侵略否定・正当化の政治家や教科書を批判するという当然の職責を果たした教員である私が『教師不適格』として解雇される、そして、日本の『良識がある』と言われているメディアが、これを問題にしない、という状況は、日本の時計が1930年代に巻き戻っているのではないか、と思わせます。 しかし、1930年代と決定的に違うところは、韓国・中国等アジア諸国がある意味で日本以上に力を持ってきていることです。国際社会は絶対に日本が完全に1930年代に戻ることを許さないでしょう。 4月25日の朝日新聞朝刊に、金大中前大統領のインタビュー記事が載っていました。インタビュアーの「アジアの中での日本の姿をどう見ますか」という質問に、次のように答えていらっしゃいました。 「周辺国から信頼されないどころか、ますます右傾化している。一番心配なのが若い国会議員や若い世代だ。過去に日本が何をしたか知らないから反省できない。だから本当の謝罪がない。」「『いつまで昔のことを言っているのか』という態度では、反日的な空気が出ても、止める勇気も意欲もなくなる。米国と手を握れば大丈夫という態度も印象を悪くしている。『もっとアジアの友人になる努力をすべきだ』という方向に変わるかどうかで将来が決まるだろう」 本当におっしゃる通りです。『過去に何をしたか』を知らなければ「反省できない。だから本当の謝罪がない。」「『いつまで昔のことを言っているのか』という態度」になってしまうのも当たり前といえ、これではアジアの真の友人にはなれるはずがありません。 ヨン様やジウ姫は、とってもチャ−ミングで、日本でも韓流スターは大人気です。私は、イ・ビョンホンのファンですけど! しかし、過去を知らないでいては、いくら韓流スターに夢中でも『真の友人』になることはできないと思います。 きちんと過去の『侵略と植民地支配』の真実を知った時、私の生徒達のように『反省でき』るし『本当の謝罪が』できるのです。そして、その時初めて『心の障壁』が取り除かれ、日本は真にアジアの友人になれるのではないでしょうか。 日本軍性奴隷、いわゆる従軍慰安婦の授業をした時、女子生徒の一人は次のような意見を書きました。「『あなた達は汚れてなんかいない!』と、私は言いたい」と。私は、この優しい意見を読む時、どうしても涙を抑えられなくて困ります。 日本の子ども達も、まだまだ棄てたものではないのです。どうか、日本人全てがダメだと思わないでください ・・・ダメなのも確かに多いのですけど・・・ 私は『免職処分取り消し裁判』を闘っていき、なんとしても教壇に復帰し、日本の子ども達にこれまでのように正しい歴史認識を育てたいと思います。しかし、ご存じと思いますが、日本の裁判官は行政の意に沿う判決を出すことに決めている状況がありますので、楽観はできません。 ですから、日本国内はもちろん、韓国の方々や中国の方々など、できるだけ大勢の人達に、この『解雇』の不当性を訴え、ともに闘ってくれるように呼びかけていきます。皆さんお忙しいでしょうが、どうぞ、私の運命に対しても関心を持っていただきたいと思います。 過去を忘れるために『未来』を持ち出すのではなく、『過去を直視』した上で、より良い未来を築くために『不正を正していけるよう』に連帯していきましょう! 本日は、長時間、拙い話を聞いていただき、本当にありがとうございました。 |