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ますだみやこニュースNo.44

2004.7.13

■増田さんとともに平和教育を進める会事務局■川崎市多摩区三田1の15の7の102■代表:大野昭之(044-922-3618)
■郵便振替:加入者名 増田都子 口座番号 00190−3−410142 年間会費:2000円

●『増田さんとともに平和教育を進める会』第5回総会(04.06.19)での増田さんの挨拶

<ご挨拶>

みなさん、お暑いところ、お集まりいただき、ありがとうございました。

 2003年10月23日、石原慎太郎都知事に任命された横山洋吉教育長は、都立学校の卒・入学式等において(「等」を付けるのは周年行事も入れるため)全教職員は正面壇上に貼られた「国旗」に向かって起立し、「国歌」を斉唱しなければならないとする、いわゆる10・23通達と呼ばれるものを出しました。これに服従しなければ「服務違反」、つまり「処分だ」と恫喝を明記した異常な通達です。これに対し、憲法・教育基本法に忠実であることを責務とし、法令遵守精神を持つ教職員は、違法な「ルール」への服従を拒否。結果、去年の周年行事から今年の卒・入学式において不起立を貫いた二百数十人の処分。定年後の再雇用が決定していた教員及び嘱託教員は即、解雇。「クレージー」としか形容しがたい恫喝・暴力・強権教育行政です。

 これは都議会の右翼反動都議・土屋たかゆき(民主党・板橋区選出)との連携、及び産経新聞報道と結びついて行われました。実は、この右翼都議・産経と連携しての都教委の暴走は、突然、始まったのではないことを、私達「東京都学校ユニオン」及び「増田さんとともに平和教育を進める会」に結集したものは、よく知っています。それは、97年の「東京・足立十六中事件」から始まっていたのです。事実を歪めたデマ報道で鳴る産経紙しか、この事件を報じず、本来、歯止めになるべき組合(都教組・全教)が所属組合員であった増田を売る、という状況下で、増田への「偏向教育」攻撃に一定の「成功」を収めたこの「事件」以後、産経紙による「校長土下座」をでっち上げての国立の平和教育・民主教育への攻撃、多摩中の「指導力有り過ぎ」教員!? 根津公子さんへの「指導力不足教員」攻撃、日野市の七生養護学校性教育事件、そして、10・23通達と、都教委は全面的に牙を剥き出しました。

 しかし、私・増田は2年半にわたる強制懲罰研修にも屈せず、断乎、闘って現場復帰を勝ち取り、さらに都教委・三悪都議に対して裁判闘争を展開、その違法性・犯罪性を暴露して追い詰めています。これまで、都議会の中で正々堂々と私達の立場を代弁してくれる都議会議員が見つからず(陰ながら味方してくれる都議はいましたが)、とても悔しい思いをしていましたが、03年度は、市民派として真っ当な都議会議員の伊沢けい子さん(市民の党・三鷹市選出)に出会いました。彼女のおかげで、とても有利な裁判状況も出ています。

 9月都議会では、真っ向から都教委に質問をぶつけてくれることが期待されます。また、3月には、この7年間の闘いの記録を社会評論社から出版することができ、5月23日の東京新聞文化欄に小さいながら書評が載りましたし、図書新聞は著者インタビューとして大きく載せてくれました。これによって『足立十六中事件』の真実を、より多くの人々が知ってくれるようになりました。雑誌『新日本文学』にも鎌田慧編集長からの依頼で、私・増田の闘いについて紹介する一文を寄稿することができました。『新日本文学』7・8月合併号に載せてくれます!

 このように、闘えば、必ず連帯してくれる人々が現れ、展望が開けると確信しています。足立十六中事件を嚆矢とした都教委・右翼反動都議・右翼ジャーナリズムによる卑劣な連携下の反憲法・反教育基本法攻撃に対決する人達と連帯し、都教委の暴走に歯止めをかけていきましょう! 義は我らに有り。
<増田さんと平和教育を進める会基調報告>
 1年間の活動の総括と当面する課題 2004.6.19

1.教育反動が強まり、横山都教委や土屋らへの怒りが高まった

 この1年を特徴づけるものは、イラクへの自衛隊の派兵や改憲、教基法改悪の動きなど、自公政権の反動的な動きが強まる中で、東京都教育委員会による教員に対する締め付け、抑圧が一段と強まったことです。その端的な表れが、卒業式、入学式などでの「国歌斉唱、国旗掲揚」等々に関する通達、いわゆる「10・23」通達である。

 この通達で、都教委は、戦前の上意下達のやり方を改めた学校教育法を蹂躙しただけでなく、「強制はしない」との国旗国歌法成立時の文科省の言明すらもふみにじって、教員に職務命令で君が代の斉唱を強制し、200人余の教員を処分しました。まさに勤評以来絶えてなかった露骨な教員に対する攻撃です。

 そして、この攻撃の強まりは、これまで都教委と連動して、都議会の内外で、教員に対するフレームアップを続けてきた土屋、田代、古賀ら、いわゆる「三悪都議」の反動ぶりをこれまでにもまして明かにしました。土屋は、板橋高校では、「君が代を歌え」と来賓席から怒鳴るという醜態を演じ、『サンデー毎日』の記事のコピーを配布した退職教員に、「式を遅らせた」とのフレームアップを行い、警察の家宅捜索という甚大な被害を与えています。

 しかし、この10・23通達や大量処分は、教員を脅かし、弾圧し、それによって、教員をさらに物言わぬ羊にしようという都教委の思惑に反して、これまで闘いの前面には出ていなかったかなりの教員の心に、危機感や怒りを燃え立たせ、君が代への抗議の着席、さらには処分に対する反撃の動きを広げています。土屋らによる七生擁護学校の性教育に対するファシスト的なデマ攻撃もまた、当該の教員たちだけでなく、市民・保護者、教員たちに、土屋らや都教委に対する不信、怒りをかきたてました。

 これまでは、闘いの前面に立つのは、増田さんや国立の教員、日野の音楽教員など限られた少数の教員たちでしたが、いまや都高教の教員を中心に、都教委を包囲するネットワークが形成されたり、東京ココロ裁判のグループが結成されるなど、かなりの数の教員たちが、都教委や土屋らに対する反撃の戦列に加わりつつあります。

 また、このような教員の新たな動きを背景に、大内、高橋氏ら学者グループの呼びかけに基づいて、「教育基本法改悪をとめよう!全国連絡会」が結成されるなど、教基法改悪に反対する運動も、いまだ強固なものとはいえないにしても、全国的な広がりを見せつつあります。こうした情勢は、私たちの闘いにとって、以前よりも有利な環境を準備しつつあるといっていいでしょう。

2.前進した「進める会」の活動

 上述の情勢の変化や私たちの積極的な活動もあって、この1年「進める会」の活動は、後退するどころか、かえって大きな前進を遂げることができました。

 その第一の現れは、土屋やその背後の「新しい歴史教科書をつくる会」勢力に対する増田さんの闘いに対する賛同署名の広がりです。この署名には、全学労組を中心とした教員の闘う部分や全労協の活動家だけでなく、多くの知識人や平和活動家なども、加わりました。このことは、あれほどひどい産経新聞のフレームアップ、都教組指導部などの敵対行為にもかかわらず、この間の一貫した闘いが、広範な人々に感動を与えたこと、私たちの運動が広範な人々の間に「市民権」を得つつあることを示しています。増田さんが集会のスピーカーとして招待される機会も増えてきています。

 そして第二は、増田さんの『教育を破壊したのは誰だ?』が出版され、多くの人の共感を呼び、予想以上の売れ行きを示していることです。出版記念パーティにも、かつてない多くの人々の参加を得ることができました。また増田さんの闘い、「進める会」の方向性が、時代の要請に沿っていることを示すものといえるでしょう。

 第三に、裁判闘争の中で、守秘義務違反の情報漏洩、情報公開条例、個人情報保護条令違反など、都教委や土屋都議らの醜悪な犯罪をつぶさに明らかにすることができたことです。これを利用して、北千住や大山、高島平、都庁、メーデー、憲法集会などでビラ配布を行い、また都庁記者室での記者会見などを行うことができました。このことは、上述の運動、影響力の広がりと相まって、土屋らに対して、大きな打撃を与えつつあります。

 第四には、組織的にも、新たなメンバーを事務局に迎え、ニュースもほぼ定期的に発行し、またホームページを開設するなど、力量も充実させることができました。東京教組などの有力な活動家も、以前より「進める会」の活動を支えてくれるようになっています。闘いの中で、良心的な一都議の協力も得ることができました。

 また、東京都学校ユニオンと連携して、教基法改悪反対、イラク戦争反対などの闘いの一翼も担ってきましたし、檜枝岐合宿はじめ理論活動、交流、連帯の活動もしっかりとやりぬいてきました。

3.当面の課題

 何といっても、当面の第一の課題は、土屋都議らに対する裁判闘争に勝利することです。有利な裁判資料がそろいつつありますが、現在の司法の動向を考えると、油断は禁物です。裁判所を包囲する、増田支援の輪を広げていくことが必要です。

 ビラ配布、署名、パンフの作成、インターネットの活用、各種集会への参加など、宣伝を強めていくことが必要でしょう。鮮明な旗印、主張を押し出すとともに、まだしっかりした自覚を持つに至らない教員や労働者・市民にも配慮したアピールの工夫も必要でしょう。

 また、都教委包囲ネットや教育基本法改悪を止めよう全国連絡会の活動、「つくる会」の教科書導入に反対する闘いなど、都内、全国の教育反動、政治反動に対する闘いにも積極的に参加して、この面からも、連帯の輪を広げていなくてはなりません。また、私たち自身も、独自の宣伝活動や集会の開催など、主体的に取り組んでいくことも必要でしょう。

 さらには都議会選挙でも、土屋ら反動都議(とりわけ土屋)をたたき落とすための闘いも最先頭に立って闘い、この闘いのネッワークに、多くの労働者、教員、市民を結集していく必要があるでしよう。板橋地区での宣伝、労働組合、民主団体への働きかけなど、創意を発揮してとりくんでいかなくてはなりません。


●大阪・高槻市の元市議会議員の脇田憲一さんから拙著の感想をいただきました。脇田さんから贈呈されました『朝鮮戦争と吹田・枚方事件』 (明石書店)もすばらしい著作です! またその次に拙著を紹介していただきました会員の渡瀬さんからの感想も紹介します。

<脇田さんから>

 玉著「教育を破壊するのは誰だ!」を5月11日に拝受しました。渡瀬さんの手紙が添えられていましたので、すぐに目を通しました。といっても、野田先生の「刊行によせて」と「はじめに」、第一部「『事件』はこうして作られた(一九九七年)」を読み終わったところで、この手紙を書いています。これは凄い本だ! というのが最初の感想です。

 私は二人の子どもの親として、「統合教育」「地元集中高校受験」で全国的に有名になった「高槻教育」を支持し、二人の子どもの教育を通じて戦後教育の今の残骸を見てきました(今の高槻教育も、あまりにも無惨です)。また国歌・国旗法制定以来の「日の丸・君が代」押し付け反対の市民の会の一員として、集会やビラまきにも参加してきましたが、共に闘ってきた教師活動家たちの脱落・変節ぶりに失望し、教師不信に陥っておりましただけに、やっと一点の灯を見る思いがしました。まだ全部を読み切っていませんが、私の短い感想を述べてお礼に代えたいと思います。

 第一点は、あなたの個の闘いを支えているものは、現場教育における子どもたちの「紙上討論」の実践であるということです。第二点は、この教育実践は、まさに民主主義の具体的実践であり、民主教育そのものであり、日本の国是であるはずの「平和憲法」で保障された教育だということです。第三点は、これは労働者の基本的権利である労働権の確立、教師であれば「教育権」の確立ですが、これが現場の実践の成果と確信の裏付けがあってこそ闘う力になるのです。

 私は鉄鋼労働者出身で長年労働運動をやってきましたが、総資本が日本の労働運動の制圧に成功したのは、分裂攻撃で職場を力で崩したことと、思想攻撃・意識管理において、職場および労働者個人の労働権を奪ったことにあります。

 手紙では多くのことを書くことはできませんが、あなたは、あなた自身の現場の教育権(労働権)を守る闘いが、今の法改悪と国民の基本的権利総剥奪の政治攻勢によって、もっとも教育に集中する攻撃の中で、個の闘いから反撃できる可能性を示したことにおいて、画期的な成果を示したといえます。その場において、教組とりわけ日本共産党の今の路線が、反労働者的であり、反革命的役割を果たしていることも事実によって暴露されています。

 なによりも私は感銘を受けたことは、事実を克明に記録するということが、いかに文章の説得力を高め、読者を納得させるか、ということです。同時に事実に基づく分析力と思考力の確かさです。欲を言えば、もう少し時間的距離と記述の客観性(参考資料や参考文献の引用など)があれば、説得力が増したのではないかと思います。

 私は50年来のライフワークとして、私が17歳から20歳までの3年間に体験した『朝鮮戦争と吹田・枚方事件』の本をこのたび出版しました。玉著受贈の返礼として、贈呈させていただきますが、テーマはちがっても共通するものを感じましたので、ご多忙でしょうが、参考になれば幸いです。
 ますますの健闘を祈ります。取り急ぎお礼まで。

2004年5月12日 脇田憲一  

<渡瀬さんから>

 何と言っても、事件の全容を明らかにする資料が、こうして完全な形で公刊されたことの意味は何にもまして大きいと感じます。ぼくがそれを強調したいのは、沖縄の事実をありのまま教えることがこの事件の発端になっており、事実を「ある解釈でくるむ」立場が「ありのままに見る」立場を押し潰そうとしているのがこの事件であるからです。反米の姿勢は当然許せないといきり立った母親も、それに同調した教育委員会、学校側管理者も、ファッショ都議会議員も、事実を勝手な解釈でくるんで、その架空の現実を現実として戦後60年を生きてきた。しかし彼らがどんなにいきり立とうと、沖縄の現実は現実として残ります。この現実を変えようと思ったら、本当の事実に戻る他はない。勝手な解釈でくるんだ事実など何の役にも立たない。それは彼らのつくった勝手な架空の現実に過ぎないからです。この事件が、事実を「ありのままに見る」立場を「ある解釈で事実をくるむ」立場が押し潰そうとする事件であることは、本書を最初のページから読み進めば誰の目にも明らかです。事実を「ある解釈でくるむ」立場が、おかしいのは言うまでもないし、事実をありのまま教えることが教育の基本であることは、言うまでもありません。事実をありのまま教えることが「学習指導要領の枠の中で授業をしていない」(p.18,左から4行)ことになるのなら、おかしいのは学習指導要領の方でしょう。ぼくは、そういう「当たり前のこと」の復権が、戦後60年の間すっかり忘れ去られてきたことに身ぶるいを感じます。

 そしてぼくは、もう一つの点で感銘を受けました。それは増田先生が生徒たちの意見に対して付している補足的な事情の説明が、いずれも、非常に適切であることです。それを読めば、事実によく当たり、よく考えた上で書かれた解説であるということが分かります。その意味で増田先生は大変すぐれた社会科の先生である、という思いを深くしました。しかし増田さんはすぐれた社会科の先生であるだけでなく、大変よい先生だと思います。人と人とが集まっても意外に大事な意見の交換はなされないものだ、と思いますが、それは教室での、生徒と先生の間の関係についても言えることです。そこで意見の交換を活発にするには、顔を合わせた人間がみんなで一つの問題について深く考えてみるのがよい。それも、それまでの経緯とは別に、全く新しい問題を提起して一緒に皆で考えるのが、しばしば有効であると思いますが、増田さんがおやりになっているのがそれです。だから、増田さんのクラスでは一つの問題についていろいろな意見が出ますが、この多様さは生徒たちの個々の経緯を反映して生じている訳で、そのような違いがあるにもかかわらず全員が一つの問題について深く考え、そのことに満足し、他人のさまざまな意見を寛容に受け入れています。こうして生徒たちの間で、大切な意見の交換がなされています。

 どうかこれからも、元気で、生徒たちの集まりの公平な中心であり続けてください。きっと生徒たちは、将来も増田さんの授業を思い出し、それを自分たちの生き方の指針にしてくれるものと信じます。

        2004年4月13日    渡瀬 嘉朗(わたせ よしろう)
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