Home
韓国全労組の先生からのてがみ

増田先生

2007年9月5日 チョ・ヒジュ 

増田先生

 真理と正義を教えるべき教師に対して、真実を教えたという理由で学校から解雇させた現実が残念です。こうしたことを行った東京都に対し、強く糾弾します。歪曲された歴史を正すために努力している中で解雇された先生の実践を尊敬いたします。先生の行動は正当であり、今後、歴史的評価が正しくなされるだろうと確信します。先生のような実践こそ、誤った歴史を正す上で大きな力になるでしょうし、真理と正義は必ず勝利するということを立証するだろうと信じています。日本政府と東京都の野蛮な歴史歪曲と教師に対する不当な解雇を撤回することを強く要求します。

 韓国の教育の状況と教育労働者の対応を知るために韓国を訪問されたことに対して感謝します。今後、日韓教育労働者の連帯をさらに強固にすることのできる契機になればと思います。
 新自由主義グローバリゼーションに抗する闘いは日本や韓国でも熾烈に行われるべきですが、国際的な連帯行動を組織することもまた重要な問題だと思います。

 韓国は、新自由主義的教育政策の持続によって教育の不平等がひどくなっており、塾などの私教育費が増えて親の教育費負担はさらに重たくなっています。また、競争主義教育政策の強化と学歴第一主義の学校政策など、矛盾がひどくなっています。教員には教員評価の導入と成果給制の導入など、教員に対するリストラが強化されています。これに対して全教組など教育労働運動団体は、教員評価法制化阻止闘争と等級成果給阻止闘争を今年の下半期の重点闘争と設定して闘いを準備しています。

 これまで教員評価は、勤務評定制度という名で評価されてきました。勤務評価制度は、校長が各学校の教師を評価する制度で、5段階で評価し、主に昇進に反映させる制度です。したがって、昇進に関心がない、または教員労組活動をする教師にはあまり関心のない評価制度でした。しかし、新たに導入されようとしている教員評価制度は、同僚である教師の評価、学生の評価、親の評価、校長・副校長の評価といった多面評価を通して教師間の競走を強め、教師を一列に並ばせる非教育的な評価制度です。教師を牛肉のように等級で分け、等級に応じて教師の月給を差別化して支給し、下位等級になり続けると事実上教壇に立てなくなるようにさせる制度でもあります。

 その一環として等級成果給制を導入しようとしており、これまで全教組など教師の抵抗によって成果給制をある程度阻止してきていますが、今年になって再度成果給制を拡大強化しようとしており、韓国政府は今年下半期の通常国会で教員評価法制化を推進しています。これに対して全教組は、教員評価法制化阻止と成果給阻止闘争を下半期の中心課題として設定し、闘争を準備しています。資本と政府の新自由主義教育政策推進の力は侮れませんが、最善を尽くし、教員評価法制化を阻止し、成果給制度を破産に追い込むようにすべきでしょう。

 また、教員評価法制化を阻止する、または成果給制度の導入を阻止する闘いを展開すると同時に、中長期的な戦略的課題として、労働者民衆の普遍的な教育権を拡大強化するための急進的な課題を提出し、これを貫徹するための構成的な運動を展開します。いわゆる民衆的教育改編運動です。民衆的教育改編運動とは、資本と政府の立場だけが一方的に貫徹される教育ではなく、資本主義を乗り越え、労働者民衆が主人公になる教育改編運動です。教育の市場化と商品化を中心とする新自由主義的な教育攻勢に対する現実的な対案と展望であり、中長期的な戦略的課題を実現するための運動です。

 新自由主義教育政策は、教育の商品化と市場化、開放化を本質としていますが、韓国の教育の特殊性と結合して、入試競争の強化、中等教育機関と大学の序列化の強化として現実化しており、これを通して教育の公共性は機能を止め、教育不平等現象はさらに加速化しています。過度の入試競争と大学序列化は教育の公共性を破壊し、真の教育の実現を妨げると同時に、民衆の無謀な出費と学生たちの苦しみを強要する核心的な地点であり、教育不平等の結果が最終的に完成する地点であると同時に、社会的不平等へつながる中心の環です。

 したがって、民衆教育改編運動の課題の中の一つである入試撤廃と大学標準化運動を全国民的な運動として展開するつもりです。今、教育問題は、全教組や教師だけの問題ではなく、労働者民衆全体の問題であり、社会運動の核心的イシューです。それゆえ、市民社会労働団体などと連帯し、入試撤廃と大学標準化問題を大統領選挙と来年の国会議員総選挙の時期に争点化させ、新自由主義の教育政策を破綻させる闘争を展開するための準備をしています。「入試撤廃−大学標準化国民運動本部」を全国単位として今年下半期内に結成し、全国民的な運動を展開する計画です。

 入試撤廃運動・大学標準化運動は、単に学生と民衆の苦しみを軽減するという消極的な意味を越え、教育の基本的性格を再規定していく運動、すなわち、教育の自由化を止揚し、教育の公共性を高めていく運動であり、消耗な競争を止揚し、個人と社会の知的・文化的能力を高揚させる運動です。入試撤廃と大学標準化運動を通して乳児教育から大学まで無償教育を拡大する土台を作り、長期的な課題を実現することにより、労働者民衆が主体となる民衆的教育制度が定着しうるように闘いを展開していきます。

 〈入試廃止と大学標準化国民運動本部・準備会)〉最初の事業として8月29日から9月20日まで全国的に自転車大長征に突入します。全64都市2,250kmの距離を一日に10km程度自転車で走り、各地域の労働者・農民などに入試廃止大学標準化実現のための全国民的な運動を展開することを訴えています。それから11月24日には入試廃止・大学標準化・学閥打破のための全国大会を開催する計画です。今こそ始まりです。新自由主義教育政策を破綻させ、労働者民衆のための新しい教育秩序を作り出していくための大長征です。一人が見る夢は空想になるかもしれませんが、数人が見る夢は現実になります。

2007年9月5日
 前全教組副委員長・現進歩教育研究所所長、入試廃止大学標準化国民運動本部執行委員長 チョ・ヒジュ