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韓国文化放送電話インタビュー

2006年5月8日(月)、19:20〜放送予定  

インタビュアー
増田ミヤコ先生は今免職されました状況だときいておりますが、 教育当局が明らかにした免職の理由はなんですか?
<増田>
私は去年の8月30日に、昇給を延期される「戒告」という処分を受けました。これは「処分」としては、そんなに重いものではありませんが、その理由が許せません。私は、授業でノ・ムヒョン大統領の去年の3・1演説を教材に使い、生徒達に大統領宛の手紙を書かせ、私の手紙も添え、それを印刷して教材にして、また授業をしました。その私の手紙の中に、自民党の東京都議会議員である古賀俊昭という男が都議会で発言した「侵略戦争してない」とか、扶桑社歴史教科書の「日本は自衛の戦争しかしていない」という「誤った歴史認識」を批判し、それらを「歴史偽造主義」と書いた部分があったので、それを東京都教育委員会は「悪口である」と決めつけて「悪い教員だ」と処分したのです。

そして、その「処分」の2日後の去年の9月1日、学校から追放され、収容所のようなところで東京都教育委員会が「研修」と称する「再教育」を受けることを強制されていたのです。でも、私は、誤った歴史認識を批判し、正しい歴史認識を生徒達に育てるという教員の職務を忠実に果たした正しい教師ですから、「反省しなければならないのは、私を罰した東京都教育委員会の方である」と主張し続けました。そのため、この3月31日、「反省しない、改善しないから教師不適格」であるとして免職されたのです。

インタビュアー
先生が教えている科目が歴史ですか?
<増田>
日本の中学校では、社会科という科目で、1年生と2年生で地理と歴史を教え、3年生で政治・経済を教えます。

インタビュアー
先生は教育当局の免職処分や免職事由を決して受け入れることができないという立場でしょうね。(教育当局がどうして本人を免職させたと考えていらっしゃるんでしょうか)
<増田>
ええ、全く、免職は不当そのものだと考えます。東京都教育委員会は、民族差別・女性差別を公言する極右の石原慎太郎都知事が自分のお気に入りの教育委員ばかりを任命しています。ですから「南京虐殺も、従軍慰安婦もでっち上げだ。こう教えるのが正しい歴史教育だ」と平然と公言する米長邦雄という教育委員がいて、私のように誤った歴史認識を批判し、正しい歴史認識を育てる教員は憎悪の的なので、免職処分したのだと思います。

インタビュアー
先生が納得できない理由で免職された状況でしたら、言い換えれば今日本の教育現場では教師たちが 自分の所信(信念)をもって、日本の侵略戦争を批判する声をだすこと、そのものができないということになりますね。そういう風潮に不安を感じますが。
<増田>
 そのとおりです。さっきも言いましたが、極右の石原都知事の下で、東京都教育委員会は、日本の中でも特に突出して、正しい歴史認識を育て誤った歴史認識を批判することをできなくさせようとしているんです。ですから、ここで私たちが抗議し続けること、抵抗し続けることをやめれば、この状況が日本全国に広がると思うのです。

インタビュアー
 他にも免職になったり処分された教員はいるんですか。
<増田>
免職されたのは、私がただ一人ですけど、侵略戦争の時の天皇賛歌だった「君が代」を強制することに服従しない教員に対しクレージーなほどの弾圧をしています。既に350人近い教員が処分されました。一度立って歌わないと戒告、二度目は給料を1ヶ月減らされ、三度目は6カ月間給料を減らされ、四度目に立って歌わないと停職という処分です。

インタビュアー
教師たちの歴史認識とか教育方式はどうですか? 勿論、みんなが同じだと思っていませんが、増田先生と同じ苦悶を持っているんですか?
<増田>
本当に残念なことですが、侵略と植民地支配の罪悪について、きちんと教えることのできる日本の教師は、非常に少ないのです。大部分は無理もないことではありますが、「事なかれ」です。日本の侵略責任問題と天皇の役割に全く触れない歴史教科書通りに教えて安全を保っているのです。だから、残念ですが、私への、この不当な免職処分に対しても、声を上げてくれる教員は、非常に少ないのが現状です。

インタビュアー
先生がやりつつあった日本の侵略歴史のような歴史教育に学生たちは大体どのような反応をみせましたか?
<増田>
生徒達は、きちんと事実に向き合い、反省し「真の和解」のためには、どうしたらいいかを考えることができました。二人だけ例を挙げますね。

●なんで、真実を子どもたちに教えないのですか? 日本が過去に行ったアジア侵略という悪いことは、まぎれもない真実ですよね? それを隠してどうなるんですか? 私は歴史は好きだけど、時々「なんで昔のことなんか分かんなくちゃいけないの? 『今』生きてるんだから、『今』のことが大事じゃん?」って思ってました。でも、増田先生の授業で、昔、日本がアジアでしたことをビデオで見て、最初は「気持ち悪い。なんで、こんなの見なくちゃいけないの?」って思ってました。けど、日本が過去にやったことをきちんと認めて、私たち子どもに教えてくれることで、少しは、「あんなことはもう二度と起こしてはいけない」と子どもたちが思うようになるのでは? と思います。その気持ちを持つだけでも大切だと思うので、やっぱり、日本に都合の悪いことでも真実を教えるべきだと、私は思います。

●ノ・ムヒョン大統領へ。私は、今まで、日本の、本当の歴史を知りませんでした。しかし、この一年間、増田先生の授業を受け、本当に、日本がアジアでしたことを知り、初めはショックでした。しかし、これらの事実は、これからの日本の未来を作ってゆく中学生の責任として、きちんと見つめ合っていかなければいけない問題なのだと思います。
そして、もっと教科書には載っていない本当のことを、きちんと調べ、日本は何をしたのか知った上で反省をし、日韓両国が、一日でも早く本当の和解ができるよう、一人の力だけではどうにもなりませんが、こうした、日本がアジアでしたことの真実を他の人にも伝えていけば、真の和解ができるのではないと思います。だから、私たち中学生はこれからも、もっと日本の過去の歴史の真実を学んでいきたいと思っています。

インタビュアー
去年韓国社会は日本の_扶桑社の歴史教科書_波紋と島根県の_竹島の日宣布_ などのため大きな憤怒を感じています。今年に入っても独島(ドクド)問題で両国の間の葛藤が大きくなっていると 感じております。
 増田ミヤコ先生は、歴史教科書と独島問題について関心はもっていらっしゃるんでしょうね。また、独島の領有権論難はどう考えていますか?
<増田>
はい。地理・歴史・政治経済を教える教員として、これらは避けて通ることのできない問題です。私の免職は、扶桑社教科書を批判して生徒に教えたことを教育当局が憎悪したことにありますが、私は扶桑社教科書は「日本の恥」だと思っています。こんなウソだらけの「歴史偽造主義」の教科書で、生徒達に正しい歴史認識を育むことはできません。まともな判断力を持ち、生徒達の未来に責任を持つ教師ならば使えるわけがありません。

独島(竹島)問題については、韓国の方々は日本人に対して「どうして分からないのだ?」と、いらつく感じをもたれていらっしゃると思います。私は日本人の大部分は「1905年」という年が、何を意味しているかを全く知らない、という現状があることが一番問題だと思っています。その上、日本人の大部分は1952年のサンフランシスコ講和条約の問題も知りません。条約や歴史について詳しい情報が報道されず余程関心のある人でなければ事実を知りません。摩擦が起きた時だけの表面的な報道で、感情的に反応している国民が多い、というのが実態です。

私は、島根大学で内藤正中先生に教わったことがあります。内藤先生の意見に賛成です。独島・竹島問題は歴史の清算を日本がきちんと行ったうえで、初めて冷静に話し合える問題だと思います。

インタビュアー
 先生は、正しい歴史教育をしたために、こういう目にあって後悔していませんか。普通に教科書を教えていれば、こういうことにはならなかったと思うんですが。
<増田>
全く後悔したことはありません。私は、1989年、昭和天皇の死んだ時の日本の異常さに、それまで、きちんと侵略と植民地支配や天皇の戦争責任について教えてこなかったことを後悔しました。これからは、自分が、どういう目にあっても、きちんと教えて自分の職責を果たそうと決心したのです。ですから「逃げない、隠さない、誤魔化さない」で、教育をしてきて全く後悔はありません。

 正しい歴史認識を育てることをしていかなければ、日本人なのに日本の歴史を知らない人達が大量に出て、それでは、日本は隣国の人達から信頼されるわけがなく、アジアで孤立していくと思います。

インタビュアー
先生は免職されることになりまして、教師の身分は維持されますが、学生を教えることはできなくなりました。これからこんな状況をどのように乗り越える御考えですか?
<増田>
考えられるあらゆる手段を使って解雇撤回のために闘っていきます。裁判闘争が中心になるでしょう。ただ、韓国の方もご存じだと思いますけど、日本の裁判所は行政を勝たせることにしている、という現実がありますので、楽観はできません。でも、私は教員として正しい教育をしてきた、という自信があり、教え子達も応援してくれますので、決して、負けるつもりはありません。

インタビュアー
今月11日韓国を訪問されると聞きましたが。
<増田>
はい。釜山市民団体協議会の方から招かれまして、「日韓のより良い未来を目指して」というテーマで私の体験を交えながら、お話しをさせていただきます。うまく話せるか、ちょっとドキドキしますけど、韓国の教員や市民の方と率直に意見を交わしたいと思って、楽しみにしています。

インタビュアー
先生が教壇に復帰できるように、私たちも心から応援しています。
<増田>
ありがとうございます。