1回目は、6月にNHK「沖縄米軍基地」のビデオを見せて意見を書かせました。続いてビデオ「人間を返せ」を見せて意見を書かせました。この時のプリントは、まだ自分の意見を表現しきれない生徒が多く、B4で5枚でした。[せんせいがっばって〜!生徒との対話(1)]
それが最終回では、B4で18枚にもなりました。それだけ生徒は自分の意見を持ち、それを表現できるように「自主的精神に満ちた心身ともに健康な国民」として成長したのです。
一人の生徒は次のように率直に書きました。
「私は紙上討論をするのが初めはイヤだった。…でも紙上討論を繰り返しているうちに私の意見が変わた。…私は「正しいことは正しい、間違っていることは間違っている」と堂々と生徒に教えることの出来る増田先生の意志は素晴らしいものだと思う。増田先生、紙上討論に反発してごめんなさい。そして紙上討論をすることに賛成していた人に対しても謝りたい。この紙上討論は、決して無駄ではなかった、と私は言い切れる。」
それに対して先生は次のようにコメントしました。
「謝るなんてとんでもありません。あなたの『反発』のおかげで、どれだけ『紙上討論することの意味』について多くの人が考えてくれたことか。…実は私は、あなたが反対意見を書いてくれた時、『シメタ!』と思いました。民主主義社会においては『反対意見』の存在というものがいかに大切であるか、岩波ジュニア新書『君たちと現代』から、いつかぜひ紹介したいと思っていたのですが、それを受け入れるところまで意識や関心(反発は関心でもあります)が整っていないと、紹介しても素通りしてしまうので(教育用語でこれをレディネスと言います)、それができるのを待っていたのです!…」
このように、「いろいろな意見を出し合い、考えあうこと」は、民主主義の本当の価値を生徒自らに実感させていったのです。1年間通して授業を受けた生徒達は知識面でも人格面でも見事に成長していきました。増田先生の紙上討論授業の素晴らしさは、足立十六中でも証明されたのです。
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