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第一次平和教育破壊攻撃=東京・足立区第16中「名誉毀損」ねつ造事件Q&A

だれでもよくわかる「名誉毀損」ねつ造事件の真相

事実は? 背後は? 処分の根拠は?

平和教育を守る足立の会          
〒214-0034 川崎市多摩区三田1-15-7-7-102 
代表 大野昭之 





 東京都足立区第十六中の社会科教諭、増田都子先生が1997年六月、二年の社会科授業でNHK福岡放映の『普天間基地』のビデオを教材に紙上討論を行なったことが発端となり、女生徒の母親Aさんが増田先生を「反米偏向教育」と攻撃し、教材プリントの片
言節句を捉えて、「名誉毀損」と提訴、さらに都教育委員会が、この母親の騒ぎを利用して処分を発令するという、平和教育に真っ向から挑戦する事件が起きました。これを『産経新聞』が追いかけ、中にはその偏向報道を鵜呑みにしている善意の読者も少なくありません。私たちは平和教育を守ることを心から願い、ここに事件の真実をお伝えするものです。


Q1 増田先生が授業で保護者を誹謗するプリントを配布したために女生徒が
不登校になったと『産経新聞』などは報道していますが、事実ですか?

A1 プリントを見た米国籍の女生徒の母親Aさんは、増田先生の授業を「反米的」と校長や区教育委員会に通報しました。この女生徒は「お母さんに(プリントを)見せて、少し意味がわかってきて反米的でいやだった」(Aさんが裁判所に提出した文書)と書いています。つまり、この女生徒は、最初は授業を「反米的」とは感じていませんでした。母親Aさんが自分の考えを押しつけていったのは明らかです。
 そして、驚くべきことは校長や区教委は即座にAさんに同調しました。校長はその事実を増田先生に告げなかったばかりか、PTA会長が増田先生の授業に「疑問のある」保護者だけを集めた会議に校長も出席しながら、そのことも一切知らせませんでした。この親たちの騒ぎは生徒たちを巻き込み、増田先生に質問してきました。増田先生はAさんの名前を伏せて、生徒たちに事情を説明しました。Aさんはそれを「自分の名誉を毀損するためにこのプリントは出された。子どもは教師を選ぶ権利があるから社会科の授業だけボイコットする」と騒ぎ立て、校長がこれに同調しました。
 その女生徒は問題の授業の時、「最初に戦争を仕掛けたのは日本だ。アメリカと日本はお互い様のような気がする。これからは一人一人が米軍基地をどうするか真剣に考え(特に日本政府は)どうしたらお互いに平和になるかを考えるべきだ」と冷静な、立派な判断をしていたのです。その女生徒が母親の意見を押しつけられ、授業をボイコットしたことは痛ましくも、むなしい行動でした。また、誤報道を続けた『産経新聞』は松本サリン事件で被害者を犯人扱いにした「マスメディア権力の愚を繰り返しているといえます。

Q2 『産経新聞』、雑誌『正論』、都議の土屋敬之氏(民主)や自民党議員、
公明所属の足立区議らは増田先生を執拗に非難するのはなぜでしょうか?

A2 増田先生攻撃の背後には二つの力がうごめいています。一つは、校長の権限強化、教職員の差別化、日の丸・君が代の推進、公教育の自由化・商品化など「中教審」路線を進める文部省・都・区教委の動きです。もう一つは『産経』や土屋都議らの「自由主義史観」運動です。「自由主義史観」は戦後民主主義を否定し、それに基づいた歴史観を「自虐史観」と決めつけ、侵略戦争を賛美し、「自国に対する誇り」を取り戻そうと呼びかけています。そのような彼らにとって日本国憲法にうたわれている平和主義、基本的人権、主権在民の民主主義の基本原理や侵略戦争の真実をきちんと教える増田先生の授業は目ざわりだったのです。

Q3 都教委が発令した『処分=減給十分の一、一カ月』は、
どのような正当な根拠があって出されたのでしょうか?

A3 正当な根拠を欠くまったく不当な『処分』です。手続き上も増田先生に事実を確認しないデタラメな『処分』です。内容上も全くデタラメです。なぜなら、今回の『処分』は校長のウソだらけの報告書に基づいて、都教委が前記議員や『産経新聞』の圧力におびえて泥縄式に出したものだからです。
 校長のウソの報告書は、@中立性を欠く授業をした、A保護者を誹謗して人権を侵害したB職務命令に違反した、というものでした。しかし、都教委は「中立性を欠く授業」=「反米の偏向教育」をしたという事実を認定できませんでした。増田先生は事実を教えただけですから当然です。ということは、この当たり前の授業を「反米的」と攻撃した保護者が間違っていることを都教委は認めたのであり、校長こそが「中立性を欠く」人であったことを認めたことです。それなのに校長のウソの報告書を採用した都教委は教育基本権やILO・ユネスコ勧告が戒める父母の教育内容への不当な干渉を認めたことになります。「職務命令」の問題についても、問題の時点で校長は出していないことを校長自身が報告書で証明しています。唯一、「職務命令」に違反したとして処分理由にされたのは、四七都道府県を楽しく覚えるための「日本列島どっこいしょ」という歌詞カードでした。まったくズサンな『処分』です。

Q4 京都教職員組合足立支部執行委員会はどうして組合員である増田先生を
非難するビラを街頭で配ったり、区内全学校に配布したりするのでしょうか?

A4 私たちも事件が起きてからというもの、足教組がこんなに典型的な平和教育への干渉・攻撃を黙って見過ごしているのか、不思議な思いで見てきました。しかも増田先生は現在も足教組の組合員です。組合員がこれだけ大掛かりな攻撃を受け、弧軍奮闘を強いられているのにそれを守らないのは実に不思議な組合です。しかし、足教組が組合として越えてはならない一線を踏み越えてしまった。増田先生を非難する街頭ビラを読み、疑念が晴れました。
 そのビラには「A教諭を支援することは、親Bさんの『名誉を傷つけられた』という訴えに対して闘うことになり、とても支援などできないことは当然です」と書かれています。その親が先に述べたように『産経』や自由主義史観グループと一体で行動しているというその政治的立場や意図は一切不問にし、その親が仕掛けてきた裁判を受けて立ってはいけないと頭から決めつけています。なぜでしょうか。それは「親」=「票」と考える独善的な政党エゴに凝り固まっているからです。ちなみに、足教組執行部は共産党系の人々によって運営されています。

Q5 母親Aさんの子どもは本当にかわいそうです。
彼女のケアーについてどう考えていますか?

A5 私たちも、もしわが子だったらと考えると痛ましくてなりません。しかし、もし私たちがAさんと同じ立場にいたら、Aさんのような行動はとらなかったでしょう。まず、その授業をした増田先生とよく話し合い、その結果、たとえ先生と意見が一致しなくとも、親と子は別人格なのですから、親の意見はよく話した上で、子ども自身によく考えさせたでしょう。そして未来のアメリカ市民として、日米の真の友好のあり方にとって、今の在日米軍基地はどうすべきなのか考えさせたでしょう。ましてや、「子どもには教師を選ぶ権利があるから社会科の授業だけボイコットさせる」などと子どもの学習権に介入し、それを奪うようなことは絶対にしないでしょう。
 不登校から転校へ子どもを追いつめたのは、増田先生ではなく母親Aさんの子どもの人格支配と、それに同調するだけだった足立十六中校長が原因です。また自分にもたらされた苦しみの真の原因が愛する母親にあったと認識することは耐えがたいことに違いありませんが、その現実を直視することなしには、子どもは苦しみを克服することはできません。
 裁判は母親Aさんが望んだことです。私たちは法廷で「真実」が明らかになるよう全力をつくします。そしてAさんの子どもには、その中で明らかになるであろう「真実」を曇りのない己の目で見つめ、苦しみの原因をつかみ、苦しみから解放される道を見出してくれることを心から願っています。


子どもを苦しめたのは誰?