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<私の知らない所でこっそりと> ―八面楚歌の中、断固「偏向教育」攻撃と闘う― 増田都子
(はじめに)

 二〇〇三年十月二三日、石原慎太郎都知事に任命された横山洋吉教育長は、都立学校の卒・入学式等において(「等」を付けるのは周年行事も入れるため)全教職員は正面壇上に貼られた「国旗」に向かって起立し、「国歌」を斉唱しなければならないとする、いわゆる10・23通達と呼ばれるものを出した。座席まで事細かに指定するもので、これに服従しなければ「服務違反を問われる」つまり、「処分だ」と恫喝を明記した異常な通達である。これに対し、憲法・教育基本法に忠実であることを責務とし(教育基本法第十条は、明確に教育行政に対し教育に対する「不当な支配」を禁じている)法令遵守精神を持つ教職員は、違法な「ルール」への服従を拒否、結果、去年の周年行事から今年の卒・入学式において不起立を貫いた二百数十人が処分された。定年後の再雇用が決定していた教員及び嘱託教員は即、解雇された。「クレージー」としか形容しがたいほどの恫喝・暴力・強権教育行政である。これは東京都議会の右翼反動都議・土屋たかゆき(民主党・板橋区選出)との連携、及び産経新聞報道と結びついて行われた。
 しかし、実は、この右翼都議・産経と連携しての都教委の暴走は、突然、始まったのではない。それは、九七年の「東京・足立十六中事件」から始まっていたのである。事実を歪めたデマ報道で鳴る産経紙しか、この事件を報じず、本来、歯止めになるべき組合が組合員を売る、という状況下で、増田への「偏向教育」攻撃に一定の「成功」を収めたこの「事件」以後、産経紙による「校長土下座」をでっち上げての国立の平和教育・民主教育への攻撃、多摩中の「指導力有り過ぎ」教員!? 根津公子さんへの「指導力不足教員」攻撃、日野市の七生養護学校性教育事件、そして、10・23通達と、都教委の暴走は留まるところを知らない状況となった。

(1)一母親が「事件」を起こした

 九七年一学期末のことだった。私は七三年に東京都に採用された中学校の社会科教員であり、当時は東京都足立区立第十六中学校に転勤したばかりで二年生を担当していた。そこで、地理・沖縄県の授業において、NHK福岡放映の九州レポート『普天間基地と普天間第二小』のビデオを使い、生徒の感想・意見をプリントしたものを教材として紙上討論を行った。初めて沖縄米軍基地に起因する同胞の苦難を知った生徒達からは、沖縄の人達への同情、米軍基地への批判、それを許す政治への批判など、その精神の健全さを示す意見が多く出た。幾つか紹介しよう。(詳細は、拙著・社会評論社『教育を破壊するのは誰だ!ドキュメント・東京足立十六中学事件』を参照して欲しい)

*私が想像していた「美しい沖縄」とずいぶん違った。
*日本政府が沖縄の人に相談もなく全部、勝手に決めちゃって、き  っと日本に裏切られたとしか思えないと思う。沖縄は独立することはできないだろうか?
*本当に日本はアメリカに好き放題されているのがよく分かった。
*東京も地震が心配だけど(こないと思うけど)沖縄の人もかわいそう。

先生から
 地震は天災ですが米軍基地は人災です。


*力でゆうことを聞かせるなんて暴力団と同じだと思った。
*日本は沖縄に関してアメリカの植民地みたいだと思った。アメリカは広いのだから、そこで軍事練習をしてほしい。

先生から
 アメリカは財政赤字と環境問題のためアメリカ国内の軍事基地は閉鎖ないし縮小しています。


*アメリカ軍は日本を守ってくれると言っても今まで本当に日本のために何かしてくれたのか?アメリカは発展した国ですごいなーと思っていたけど、いまではその反対。
*この原因は戦争なので、やっぱり戦争はよくないと思った。
*あんな軍事基地があっても戦争があるわけでもないのに何のためにあるんだろう

先生から
 アメリカ政府はアメリカの「国益」をおびやかす国があればいつでも戦争すると明言しています。そのために沖縄=日本の米軍基地は絶対に必要とアメリカ政府は言っています。


*「土地を返してください」というと「じゃあ、代わりの土地を・・・」というアメリカのやり方はとてもきたない。
*今、みんな「日本は平和」だって言うけど、こんなの全然平和じゃないと思う。
*もし沖縄の基地を減らすために本土に基地が移ったら、今度はその土地の人達が困るから、アメリカに戻って自分の国に軍事基地を作ればいいと思う。
*米軍基地を作らせるのが悪いと思った。

<義は我にあり!> ―02
先生から
 沖縄の人達は、もちろん抵抗できる限り抵抗しましたが米軍は暴力(銃剣とブルドーザー)でむりやり土地を取り上げて基地を作ったというのが歴史事実です。
*日米安保条約をなくすしかない。

先生から
 安保条約をなくそうという人は少数派です。アメリカの戦争のお手伝いに自衛隊を協力させるという約束をしています。

*海上軍事基地といったら珊瑚礁がつぶされるし、漁業が困るし、また本土に来てもやだし・・・これはー、とても頭の痛い問題だと思う。
*沖縄だけじゃなくて日本全国に米軍基地を移せばいいと思う。
*何とか子どもが安心できて、自然も守れる解決策を見つけてほしいと思った。
*「日本であって日本でない」という土地があることを知って驚いた。
*「日本の安全のために」ということで、沖縄の土地、人が犠牲になって、いやだと思った。


アメリカ人と結婚している一母親が、これを読み(読むよう唆したのは都内公立小学校の女性教員である)「反米教育だ、反米思想だ、こんな授業をやらせていいのか」などと足立区教育委員会指導室に一時間にわたる密告電話をした。『密告』であるから、もちろん、私は知らなかった。
 足立区教委は、このような『保護者の苦情』なるものに対し、どう対応したか?私には全く秘密に、指導室長・指導主事以下、彼女に即座に同調し、私に関することは「何でも言ってくれ」と激励していた。校長・教頭もまた、私には全く秘密に即座に彼女に同調して『反米偏向教育』と断定していた。さらにはPTA電話連絡網を使い、Tたる私抜きの『PTA』会議を開いて、私の授業を問題視する保護者だけを集める、などして騒ぎまわらせていた。見事にも卑劣な『学校・家庭・地域の連携』であった。実は、足立区教委指導室長がお伺いを立てた東京都教育委員会は、当時でさえ、私のその授業を「偏向教育とは言えない」と指摘していたのである。にもかかわらず、指導室長は、その事実を隠蔽した。これは六年後に裁判の中で明らかになった事実である。このような指導室長(現・豊島区内小学校長)やら指導主事やら校長、教頭(現・葛飾区内中学校長)やらが、東京都教育委員会の言う、望ましい『教育公務員としての資質・能力』十分なる者達らしい。
 ところで、当然ながら、私には秘密に行われていた、この陰湿な連携を、私だけは全く知らなかった。そこで、親の騒ぎに巻き込まれた生徒から質問を受けたため、授業の中で、この母親を『この親』と匿名にして『このようなアサハカな思い上がりによる教育内容への干渉は許しません』と紙上討論プリントに書いて説明した。足立区教委指導室長・指導主事、校長、教頭は密談の上、この母親に「名誉毀損」と、私を提訴させた。さらに、この母親は自分の娘である生徒に、二学期から私の社会科授業のみ「権利としてボイコット」をさせた。この生徒は、直後、当時の親友に「私はどうでもいいんだけど、お母さんが『社会科の授業は出なくていい』と言うから出ないんだ」と言っていた。そして3ヶ月後、友人関係がうまくいかなくなって不登校となり、その後、転校した。この母親は、それを私のプリントのせいだとして、また騒ぎまわった。
 問題の根は、私が前任校の足立区立第十二中学校できちんと歴史の事実、社会の真実を教え、生徒たちが教育基本法前文にある『真理と平和を希求する』人に成長した結果、足立十二中での九七年三月の卒業式の『国歌斉唱』(未だ国旗、国歌法はなかった)時に生徒達の一部が抗議の着席をしたことにあった。これを、鈴木明・足立区議が区議会で、私の「偏向教育」の結果と問題視し、私は足立区教委から狙われていたのであった。それが、この母親が起こした「足立十六中『名誉毀損』捏造事件」裁判の過程で判明した。

(2)都教組(全教)は所属組合員を売った

 私は、この母親が起こした事件の大騒ぎの中でも一度もたじろいだことはない。日本国憲法制定後、その理念に反する政治が何十年も実施され、同様、教育憲法たる教育基本法の理念に反する教育行政が何十年も実施されている以上、憲法・教育基本法の理念に忠実な社会科教育は、いずれ、どこかで激突するだろうと思っていた。人権尊重・人格の尊厳・自由・真理と正義・自主的精神・・・そういった教育上の基本的なものが、体系的に、否定、抹殺されつつある学習指導要領、及び、それに忠誠たらんとする教育行政という構造において、憲法・教育基本法の魂であるそれらをきちんと教える教育は、いずれ激突する・・・その時が、来た。そして、その時・・・私は、たった一人だった。文字通り孤立無援だった。なぜか?

<義は我にあり!> ―03
 当時、私が所属していた都教組(全教)足立支部執行委員会は、どう対応したか?彼らは「民主教育、平和教育を進めます」というスローガンを掲げながら、『父母国民と手を結ぶ』方針から、私に対し、教育基本法第十条が禁ずる『教育に対する不当な支配』干渉を行ってきた母親に屈服するよう迫ったのである。そして私に対し「母親を誹謗中傷した」として都教委が不当処分を出すと、これを歓迎した。所属組合員である私の教育を『偏った教育』と明記したビラ(都教委でさえ「偏向教育とは言えない」と認定していたのに!?)を大々的に足立区内繁華街でばらまくやら、足立区内全教職員に配布するやら、という体たらく。そのビラたるや、拾った生徒が右翼のものと勘違いして「センセー、ヤツラ、また、こんなものくばってたよ。訴えちゃいなよ」と言うほどのものである。それを受け取った私も、てっきり都議・土屋らがばらまいたものと思った。ところが、末尾に「東京都教職員組合足立支部執行委員会」と明記してあったので、ズッコケてしまった。翌日の「しんぶん赤旗」は、この都教組(全教)の行動を嬉々として報じた。
 私は、都教組(全教)おススメの、教育への不当な干渉をしかけた一母親への屈服を拒否した。そして所属組合員を売って恥じない都教組(全教)では闘えないため、私は新組合・東京都学校ユニオンを立ち上げ、全労協(全国労働組合連絡協議会)に加盟して、さらに断固として闘った。
 二〇〇三年、東京都教育委員会は日野市にある都立七生養護学校の性教育に関連して一一六名もの教員(管理職も含む)大処分を行った。この学校の性教育は、それまで都教委からも高く評価されていたのに、である。これも民主党都議・土屋が尖兵となり、自民党都議・古賀、田代が協力して「学習指導要領を踏まえない過激な性教育、過激なジェンダー・フリー教育」と都議会で攻撃し、産経新聞がこれを大々的に報道した結果だった。〇三年九月二五日付「新聞都教組」によると「都障教組は・・・一部都議らの主張を全面的に受け入れ、『教育活動』を『不適切』ときめつけたことは、教育基本法が禁じた教育への不当な支配そのものと批判した声明を発表しました。都教組も12日付で教文部長談話『教育内容に乱暴に踏み込んだ都教委の処分強行は、東京の子どもと教育への総攻撃ーー都教委の暴挙に満身の怒りを持って抗議するとともに、処分の全面撤回を要求するーー』を出しました」そうだ。九七年、一母親による反米偏向教育攻撃から始まったこの『足立十六中事件』こそ、まさに「一部都議らの主張を全面的に受け入れ、『教育活動』を『不適切』ときめつけたことは、教育基本法が禁じた教育への不当な支配そのもの」「『教育内容に乱暴に踏み込んだ都教委の処分強行は、東京の子どもと教育への総攻撃ー都教委の暴挙」の嚆矢であった。もし、都教組(全教)に教職員組合としての良心が存在するならば、真摯な自己批判と増田への謝罪が必要だ、と考えられることだろう。
(3)困った「人権派」弁護士

 私の闘いが困難だったのは、攻撃開始時に、前記のように所属組合員を売って恥じないような組合に属していたことと、最初に頼んだ弁護士が「大船に乗った」どころか泥船だったことにある。この弁護士、「人権派」として有名な方で、今でも「人権派」「護憲派」の会にはたいてい顔と名前を出して活躍していらっしゃる方だが、何とも教条主義だった。『教師は権力者、父母・生徒は弱者』という『公式』から、一歩も抜け出すことができなかった。クライアントである私の説明に、なぜか聞く耳を持とうとしなかった。これは応用問題である。一般的公式が、いつでも当てはまるとは限らない。歴史事実として、『魔女狩り』の先頭に立ったのは、常に民衆の中のアサハカな部分であった。クリスタルナハトではヒトラーユーゲントの子どもたちが、ガラスを砕いた。いつの世も『支配的な思想は、支配者の思想』なのだから、支配者の手先となる、民衆の中の、民衆の裏切り者は常に出てくる、という『公式』もあるのだ。
 『国民の教育権』は「『子どもたちの真理・真実を知る権利』を保障しろ」と要求する『権利』なのであって、権力とツルミ『子どもたちの真理・真実を知る権利』に干渉・介入・妨害する『父母』が、『弱者』であるはずがない。『民衆』の中の『民衆の裏切り者』は、もはや『民衆』ではなく、『権力の尖兵』そのものである。彼らは、未来の主権者である子ども達の首を絞める者達であって、憲法・教育基本法下の教師は、相手が誰であれ『不当な支配に服』してはならないはずだ。先ず、彼らの、その卑しい汚れた手を、子ども達の首から離させなくてはならない。しかし、この弁護士は、自分が好きな公式から一歩も出ようとしなかった。
 この弁護士、「増田さん、なんで、あなたが指示してプリントにアンダーラインなんか引かせるんですか。生徒に自分で引かせればいいじゃないですか」などと、のたまう。私は、私の教育方法についてのご教示を頼んだことはないのだが。この弁護士の作成『和解案』なるものは、『原告・母親は、反米軍基地は、反米ではないことを理解する。被告・増田は原告の感情を傷付けたことを謝罪し50万円を払う』というものだった・・・『反米軍基地は反米ではないことを理解』という変な日本語はともかく、最初にいきなり殴り付けてきた、この母親の非を認めさせないでおいて、なぜ、私が「謝罪」しなければならないわけ?おまけに言うことか、「あのプリントは、恥ですよ」・・・おい、おい、おい・・・こんな馬鹿げた『和解』=増田屈服案を、そのまま受け入れたら、黒子として、この母親の後ろにベッタリ張り付いている教育委員会が、即座に飛び出してきて、「お前は、自分の非を認めたな、処分だ」となることは、目に見えている。

<義は我にあり!> ―04
 この弁護士ときたら、『善意』には違いないのだろうが、私の『処分』への道を、一生懸命、掃き清め、しかも、どうしても、それに気づかない、という人物であった。おまけに「最後に、このお母さんに『処分は望まない』と一筆、書いてもらったら、いいですね」・・・おい、おい、おい・・・そりゃ「『処分してやってね』と書いてくれ」と依頼することだよ。なぜ、私が、そんなことを『お願い』しなければならないわけ?
 この母親とタイ・アップしていた足立区教委は、この『和解案』なるものを、私が受け入れるもの、と思い込んでいたようである。この弁護士が「これを増田に受け入れさせますから」と言ったに違いないから。この母親が『小林和子』という名で書いたという、雑誌『正論』九八年一一月号によると「増田の弁護士(即ち増田)が『和解』を申し込んだ」ことになっていた。実は、足立区教委は九七年一一月には、もう私の『処分』を都教委に要請する報告書原案を作成済みであったのだ。この弁護士のおかげで、私が屈服するものとみたのである。しかし、私は屈服しなかったので、それは『幻』の報告書になり終わってしまった!しかし、今もって、この弁護士には、自分が果たした役割についての自覚は、なさそうだ。ただ、彼がクライアントに利敵行為をし、さも私が屈伏するかのように言ってくれたことは、足立区教委指導室長の裁判証言や報告書によると、この母親をはじめ彼らに大いなる期待を抱かせ、撹乱することになっていたようで笑えた。この弁護士のために言っておけば、むろん、本件以外では、立派な人権派弁護士であることは間違いないだろう。
 幸い、『真の人権派弁護士』の最長老とも言うべき、元・教科書訴訟弁護団長の森川金寿弁護士が引き受けてくださってから、闘いは前進した。さすがに森川先生は、お送りした書類だけで、直ぐ、この問題の本質を見抜かれて、格調高い、素晴らしい準備書面を書いてくださった。そして、真の意味で「人権」とは何かを知っており、『本物』と『偽物』を見抜くことのできる能力を持つ人たちが、口コミで、一人、また一人と集まって『平和教育を守る足立の会』を立ち上げ、私をしっかりと支えてくれた。そして、数年の苦闘の後、前記、東京都学校ユニオンを立ち上げた。これで、やっと、都教組(全教)、「人権派」弁護士が私のスカートを踏んづけるだけ踏んづけてくれたマイナス地点からゼロ地点に立つことができた。
(4)右翼都議・土屋、産経新聞、都教委、校長・教頭、官僚裁判官の総攻撃

 この母親は産経新聞に一方的情報を流し、右翼都議・土屋が飛びついた。産経紙と土屋は私に対する『偏向教育』バッシングキャンペーンを張り、都教委に私の『懲戒免職』を迫った。土屋と自民党都議・古賀俊昭、同・田代ひろしは共著で、名うての右翼出版社である展転社から『こんな偏向教師を許せるか』という俗悪本を出した。同書には「感情的な反米教育」「犯罪事実」「これだけの偏向授業をしている確信犯ともいえる教育」「生徒をマインドコントロール・洗脳」などと、私の授業に対して全くのデマ・誹謗中傷が満載である。私は、三都議と展転社を名誉毀損、プライバシー侵害で東京地裁に提訴した。
 ところで東京都教育委員会は、このような都議や産経紙の要求のままに、私に不当な連続処分をかけてきた。第一減給処分、第二減給処分、第三処分たる懲罰長期研修処分である。この研修処分は九九年九月一日から〇二年三月三一日までの二年半におよんだ。権力を嵩にきた現場外しの強制、そのための『研修所』送りである。しかし都教委は私を『指導が不適切な教員』なるものには、一度も認定できなかった。それには無理があった。そのような事実はないから。私は、「職務命令だ」と彼らがいうところの「研修を命ずる」という一枚の紙切れを受け取ったのみである。この現場外しの不当処分に対し提訴して闘って初めて都教委は00年八月三一日付で、つまり研修命令から一年後になって、私がさも『指導力不足教員』であるかのようにでっち上げた文書を大量に出してきた。それでいて、いや、だからこそ、というべきか、都教委は、地方公務員法第三十四条の禁ずる「守秘義務」に違背し、「東京都個人情報保護条例」「東京都情報公開条例」に違背し、私の個人情報を、この三都議に漏洩するような非行を犯しながら平然としている。そして、都教委は私の「該当者調査と懲戒処分要求」に対しては全く無視し通してきた。東京都教育委員会あげての組織的権力犯罪というべきであろう。私は今、この件でも都教委を提訴し、損害賠償を請求している。
 事件を起した一母親、それと全く同じ知的レベルにあった足立区教委指導室長・指導主事、足立十六中校長・教頭、東京都教育委員会、右翼都議どもの共通点は、道理に訴えるのではなく暴力によって(暴力をふるえる権力がなければ、それを持つ者に擦り寄って)人を屈服させんとするところにある。彼らには義なく、道理がないのだから、そうするしかないのであるが、しかし、私は義も道理もなき者たちには絶対に屈することはない。

<義は我にあり!> ―05
 また、『裁判官の資質』も大問題である。九九年七月一日に土屋が足立十六中の学区域一の繁華街・北千住で行った街宣を名誉毀損で提訴したものは、私が勝訴し、三五万円を支払わせたが、判決の中に次のようにあった。「学習指導要領では日の丸を掲揚し、君が代を斉唱するよう指導を求めていること、原告(増田)は、学習指導要領には一定の拘束力があるにもかかわらず、生徒に対し、教師としての立場で、日の丸、君が代の持つ意味、歴史的経緯について批判的に紹介し、君が代は国歌でないと発言していること(当時は『国旗・国歌法』は無い)、原告(増田)は、政治的色彩の強いテーマを題材に紙上討論授業を行っていることからすると、被告(土屋)らにおいて、原告(増田)が学習指導要領の枠の中で授業をしていないと信じる相当の理由があったと認められる。」「(増田は)政治的見解の対立のあるテーマを授業で扱っており、政治的中立性が保たれるよう配慮することが必要であるにも関わらず、・・・紙上討論授業において米軍基地問題を取上げ、日米安保条約反対、米軍基地反対の方向に議論を導いているばかりか、教師としての立場から真実を伝えると強調した上で日米安保条約反対、米軍基地反対の意見を掲載し、その意見は生徒を説得するべく強い調子で書かれている」だから土屋が『偏向教育』と信じたのにも無理がなく、誤信相当性があるので違法性が阻却される、と!?
 ここには現在の裁判官が、憲法第九九条(公務員の憲法尊重擁護義務)を忘れ切った『立場』に立っていること、『日本国憲法を基準として公正中立』であるべき裁判官自体が『安保反対の立場に立つ者は政治的中立性を守っていない』とみる『偏向した立場』に立っている者であることが、露骨に表明されている。その他、処分撤回裁判においては、山口幸雄、三代川三千代裁判官らは、一母親・産経・土屋・都教委のでっち上げストーリーを、そのまま認定しただけでなく、都教委の主張が弱いとみるや、裁判官自ら事実を捏造して都教委を正当化してやる、という体たらくであった。山口幸雄裁判官は、「君が代」伴奏拒否教員に対する処分も「正当」と判決した。「心の中で反対だと思う『自由』は認められているのだから、心の中で『反対』と思いながら、弾けばよい」というわけだ。小泉首相の靖国参拝を違憲と断じた福岡地裁裁判官のように憲法尊重擁護義務を果たしている裁判官も稀少ながら存在するようであるが、行政の犬となって恥じない官僚裁判官が、現在は大半のようである、といったら言い過ぎだろうか?
(終わりに)

 以上に見るように、私は四面楚歌ならぬ八面楚歌・・・・一部右翼的保護者、・保身しか考えない校長・教頭、・都(区)教委、・土屋たかゆきら右翼都議、・産経新聞、・行政の犬になり下がった官僚裁判官、・所属組合員を売って恥じない全教(都教組)、・子どもが泣いたという浪花節にコロリと引っかかり、教育内容・方法に対して不当な干渉をしかけてきた一母親への屈服を迫った「人権派」弁護士・・・の中で、断固として闘ってきた。私には怖いものはない。なぜなら、義は我にあり、真実は我にあるからだ。たとえ、全世界が敵に回りデマ宣伝が行き渡ろうとも、私の生徒たちは、私が、ごく真っ当な教員であることを知っている。
今後も、自信を持って断固として闘い、違法都教委、違法都議、右翼デマジャーナリズムを追いつめ、恫喝暴力教育行政に風穴を開けていきたい!