都教委は教育行政機関じゃないのか?

 去年の12月25日に「都教委、育鵬社教科書採択理由『委員に聞き取り』記録無し!?」と皆様にお知らせしました。

 去年7月23日の定例会で、6人の教育委員たちは「どの教科書が生徒にとって一番良い教科書だと考えるか」を一秒も議論せずに、いきなり匿名投票し、4:2で育鵬社教科書を「採択」したのでした。そして、傍聴者のいなくなった会議場で「採択理由は、都教委が六人に聞き取りした」(東京新聞2015年10月2日付)とか…そして、その「採択理由」は10月1日に都教委HPで公開。


 「都教委は、採択する教科書を決めた一か月後に採択理由を公表する方針だったが、大幅にずれ込んだ。その理由について、都教委の担当者は『育鵬社版に対する懸念があるとの意見を付記すべきだ、との声が一部委員からあり、どういう形で表記するか検討していたため』と説明した。」(同紙)

 そこで、私が、この「教育委員からの聞き取り」記録の開示請求をしたら「存在しない」ということだったので、それではと、「都教委HP上の育鵬社教科書採択理由についての注記※に関する全ての記録文書」の開示請求をしました。

※ HP上の注記
http://www.kyoiku.metro.tokyo.jp/buka/shidou/28_31chuu_saitaku/saitaku.pdf
「(注)東京都教育委員会は、一部の委員等から『歴史的分野、公民的分野では、社会的見解が分かれている育鵬社の教科書を採択することには懸念があるとする意見があったことを付記すべきである』との意見が出されたことを受け、この通り記した。」

 そして、想定通り「請求に係る公文書は、作成および取得しておらず、存在しない」という回答…

 東京都教育委員会という「教育行政機関」のはずの組織は、もしかしたら、行政機関の「文書主義の原則」ということに無知なのでしょうかね?



☆内閣府作成の「行政文書の管理に関するガイドライン」を見てみましょう!
http://www8.cao.go.jp/chosei/koubun/hourei/kanri-gl.pdf

 先ず「公文書等の管理に関する法律(平成21年法律第66号。以下「法」という。)第1条に規定されているとおり、国の諸活動や歴史的事実の記録である公文書等は、健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源として、主権者である国民が主体的に利用し得るものであり、このような公文書等の管理を適切に行うことにより、行政が適正かつ効率的に運営されるようにするとともに、国の有するその諸活動を現在及び将来の国民に説明する責務が全うされるようにする必要がある。」とあります。

 国民主権下の法治国家なら、当然のことで、これは国の政府ならずとも、地方政府である各自治体にとっても、当然の心得のはずです。

「第3 作成」の1は「文書主義の原則」として以下のようになっています。
「職員は、文書管理者の指示に従い、法第4条の規定に基づき、法第1条の目的の達成に資するため、○○省における経緯も含めた意思決定に至る過程並びに○○省の事務及び事業の実績を合理的に跡付け、又は検証することができるよう、処理に係る事案が軽微なものである場合を除き、文書を作成しなければならない。」

 これもまた、地方行政機関にあっても、当然の義務のはずです。

「東京都教育委員会の職員は、経緯も含めた意思決定に至る過程並びに事務及び事業の実績を合理的に跡付け、又は検証することができるよう、文書を作成しなければならない。」

 さらに、このガイドラインには以下の文言もあります。
「○ なお、審議会等や懇談会等については、法第1条の目的の達成に資するため、当該行政機関における経緯も含めた意思決定に至る過程並びに当該行政機関の事務及び事業の実績を合理的に跡付け、又は検証することができるよう、開催日時、開催場所、出席者、議題、発言者及び発言内容を記載した議事の記録を作成するものとする。」


 非公開=秘密の「懇談会等について」さえも「経緯も含めた意思決定に至る過程並びに当該行政機関の事務及び事業の実績を合理的に跡付け、又は検証することができるよう、開催日時、開催場所、出席者、議題、発言者及び発言内容を記載した議事の記録を作成するものとする。」ものなのです!

 それが、民主主義国家における行政機関=お役所の当然の仕事です! 


★都教委の文書管理規則にだって、以下のような文言があります!
http://www.kyoiku.metro.tokyo.jp/kohyojoho/reiki_int/reiki_honbun/g1011920001.html#top
「都教育行政の運営に関するもの」として「二 教育委員会が執行すべき事務事業に係る基本的な方針及び計画の設定、変更及び廃止に関するもの」
「広報及び広聴に関するもの」として「教育委員会が執行すべき事務事業に係る基本的な方針及び計画の広報及び広聴に関するもの」

 「教育委員会が執行すべき事務事業に係る基本的な方針に関するもの」そのものである教科書採択理由について「教育委員から聞き取りした意見」を全く文書に残さない…とは、民主主義国家の行政機関においては、有り得ないっ!? でしょう。

 都教委HPに載せるという「広報に関するもの」そのものである、「教科書採択理由(注記を含め)記載」について、教育長が「速やかに公表していきたい」(会議録)と明言=公約したにもかかわらず…東京新聞によれば「一か月後に採択理由を公表する方針」…が、すったもんだしたらしく、なんと、2カ月と1週間後の「速やか」ならざる公表だったというのに、

その「経緯も含めた意思決定に至る過程並びに当該行政機関の事務及び事業の実績を合理的に跡付け、又は検証することができるよう、開催日時、開催場所、出席者、議題、発言者及び発言内容を記載した議事の記録」を一切「作成および取得しておらず、存在しない」とは…

 「検証」されたら困るので、検証「不可能」なように、公文書を「作成および取得」せず「存在」させない!?

 しかし、こんなにもユニークな注記をHPに載せる、ということは誰かが起案書を出し、教育長、あるいは部長が決裁しなければ、できないのではないだろうか、とも思うのですけどねぇ…

「存在する」のに「存在しない」とウソついてないかしら? こちらは、それを「検証」する手段がないのだけれど…


★高嶋伸欣琉球大学名誉教授が「都教委は、もはや違法行為を恒常的に行う違法機関と化している」とおっしゃっていました。現に都教委の処分行政は、裁判所において「違法行為を犯した=人権侵害を行った」と断罪・認定され、敗訴続きです。

 東京都教育委員会は暗黒街のギャング機関と化している(笑)…とまでは言えないのかもしれませんが…もはや国民主権下の教育行政機関=お役所ではないのかもしれませんね…

 でも、そういえば「HPの注記に関する全ての文書」を開示請求したのは去年12月22日でしたが、規定の二週間…本年1月5日までには回答できませんでした。「業務を行わない年末年始の休日が含まれるため」という理由で…

 でもね、「業務を行わない年末年始の休日」を除いたって、12月28日まで7日間あったし、1月も2日間あったんですよ! で、「存在しない」という回答が出たのは1月12日!?

 つまり「存在しない」ということを発見するために7日間+2日間+7日間=16日間かかったんです。都教委の書類棚の隅から隅まで16日間かけて探しまわって、やっと「存在しない」ってことが分かったんでしょうかね!?

 この非効率こそは、やっぱり、東京都教育委員会はまぎれもなく、お役所だった=行政機関だった、というアカシかしら? 行政の「文書主義の原則」を知らない行政機関=お役所!?