英エコノミスト誌の安倍内閣批判記事の和訳 1/5

皆様
 おはようございます。増田です。昨日の、英エコノミスト誌の安倍内閣に対する批判記事を、さっそく和訳してくださった方がいます。友人の私訳なので、「訂正歓迎」ということです。

 「バック・ツー・ザ・フューチャー」は、たぶん、あのマイケル・フォックス主演の映画と掛けてあるので、そのままにしてあるのだと思いますが、安倍内閣に進呈する和訳としては、
「未来に背を向けて」ぐらいでしょうか?

 でも、本当に「ぞっとするほど右寄り内閣」・・・産経紙は、この記事を書いた英記者も「朝日新聞や一部毎日新聞の見立て」をそのまま載せているのだ、というのでしょうかしら?



http://www.economist.com/news/asia/21569046-shinzo-abes-appointment-scarily-right-wing-cabinet-bodes-ill-region-back-future

日本の新内閣

バック・ツー・ザ・フューチャー

安倍晋三が組閣した ぞっとするほど右寄り内閣が、この地域に悪い兆し

英国The Economist誌 2013年1月5日

12月26日、日本の新首相・安倍晋三氏は自らの新内閣の陣容を明らかにした。第一級ナショナリストの安倍氏は、5年間で第三期めの景気後退に耐えている経済の転換に専心すると約束した。2006年から7年、経済施策が戦時罪責をめぐる不必要な口論と災い発言の多い内閣に引っ掻き回され、大災禍に終わった首相第一任期で学んだ、と首相は言う。

 問題は、写真中央にいる安倍氏が政府にそのメッセージ発信を続けさせられるか否か、にかかる。19人の閣僚を選ぶにあたり、彼はすでにそれを疑わせる理由を、さらに結局のところ、彼は疑わせようと望んでいる、とさえ示した。

以下を考えてみよう。閣僚中の14人は「一緒に靖国に参拝する会」のメンバーであるが、これは東京にあり、戦犯罪として処刑された指導者たちに栄誉を与える神社である。13名は「日本会議」といって「伝統的な考え方」への復帰を支持し、戦時の過ちにたいする「謝罪外交」を拒否するナショナリスト・シンク・タンクのメンバーである。9人は、軍国主義時代日本にもっと栄光を与える学校で歴史教育を求める議員の会に属している。彼らは日本の戦時残虐行為のほとんどを否定している。

この隊列中には新文科大臣・下村博文がいるが、彼は1995年に打ち立てられた道標、日本のアジアへの残虐行為を遺憾とする”村山談話“の撤回を望むばかりか、1946年から48年に行われた戦犯裁判判決の取り消しさえ求めている。

安倍氏は1946年アメリカが課した日本を平和主義履行の国とする憲法、また安倍氏が愛国心を過小評価すると考える教育法、そして日本が従属的役割を担う安全保障条約という、国の基本的現行憲章のうちの3法を改訂する自らの希望を、一切隠していない。

しかし選挙民たちは何を望んでいるのか?
安倍氏は一般日本人のうち、日本の戦後構造を根から枝まで改造したい彼の食欲に同調するものはわずかだと知っている。ここにこそ、これから数ヶ月は経済に専心する良い理由がある。彼の率いる自民党、次党である公明党は12月の総選挙で勝利し、日本国会の衆議院3分の2の議席を占めた。6月に議席をめぐり選挙の行われる参議院は、現在野党に支配され、民主党がリードしている。

選挙民たちは不安定とは言えないまでも、自分たちの意見表明はしていないが、安定した経済運営があれば、安倍氏は参院をも勝ち取ることができる。そうすれば、彼はここ何年来なかった最強の統治権限を持つことになろう。

現在のところ、安倍氏は経済の滑り出しを目論んでいる。長期デフレの意気消沈から日本を跳ね上がらせる道として、日銀にたいし2%のインフレ目標設定を強く求めている。蔵相麻生太郎にたいしては、貸借制限なしの新しい金融刺激策をつくるよう指示した。自らも元首相である麻生氏は、国債借款がすでにGDPの200%を超える現在、いかなる浪費にも唖然とするであろう財務省官僚に打ち勝つ数少ない政治家のひとりかもしれない。

建設と公共事業におぼれていた過去の自民党の大型消費の時代とは違うと安倍氏は否定している。しかし、新しい金遣いが昔のやり口よりどれほどよいのかは、これから証明してみせねばならない。新しい借款がある時点で突然、鋭い上昇カーブで高利子となり、政府の果たすべき負債返済に影響する危険がある。

これまでのところ、投資家たちは疑問のもつ利点を安倍氏に与えており、それは彼の中央銀行叩きが円安を助けているからでもある。株式市場は現在、2011年3月11日の地震・津波のころより高値をつけている。投資家たちはエネルギー公共事業や核関連機器の製造業に支持される自民党が、反原発抗議者たちを意気沮喪させ、停止している原発装置にスイッチを入れることを期待している。
海外では、少なくとも参議院選挙までは、注意深く歩むしるしを見せている。元防衛大臣・額賀福志郎氏が1月4日ソウルを訪問して韓国大統領に選挙された朴氏と会談することになっており、これは日本では竹島、韓国ではドクトと呼ばれる島をめぐる紛争で怪しくなった関係修復にとって歓迎すべき企てである。

安倍氏はまた、米との安全保障関係を強めると約束しており、これは民主党政権下ではかならずしも恒にスムーズでなかった点である。就任にあたり、「日本の外交・安全政策の転換がまず第一歩」と安倍氏は述べた。中国が逆毛を立てたことは避けがたい。公式紙のひとつ・中華日報は、日米同盟を中国に圧力かけるために使えば「単に、東シナ海の、日本では尖閣諸島、中国ではディアオユ諸島として知られる島々をめぐる紛争の緊張を悪化させるのみ」と警告した。安倍氏は中国政府に対して平和のタバコを勧めることなく、ただ表情固く日本の領土を守るとの約束のみ述べた。先月の中国偵察機が尖閣諸島上を飛行したのを迎撃するジェット機8機の緊急発進に続くものだ。1958年に記録が開始されていらい最初の、日本の管理する空への中国サイドからの侵入であった。

安倍氏は中国にたいし神経を抑えなくてはならず、しかし自らのナショナリスト的本能は抑制し、過去の幽霊は自民党の地下倉庫に安全に錠をおろして閉じ込めて置かないといけない。このような抑制はつねに困難なものだ。安倍氏の新内閣は、それをほとんど不可能なものとしている。