今年も8月15日が近づいています。東日本大震災と福島第一原子力発電所事故のもたらした悲惨な事態は、第2次世界大戦、太平洋戦争がもたらした甚大な人命の喪失や家屋の破壊を思い起こさせるものです。66年前に終わった日本の侵略戦争は、中国はじめアジア諸国の数千万人の民衆の命を奪うとともに、300万人の日本国民の命も、戦死や餓死、空襲、原爆等々によって奪いました。
しかし戦後66年の今日、敗戦時の「2度と過ちを繰り返しません」という誓いを忘れて、海外への自衛隊の海外派兵や有事法制、憲法改悪など、再び軍拡や戦争準備への危険な動きが強まっています。学校教育における平和教育の弾圧や「日の丸」「君が代」の強制、侵略戦争讃美の歴史教科書の採択、さらには閣僚、議員等々の靖国参拝も、その重要な一部分です。
石原都知事は、これまでと同様、今年も8月15日に靖国神社に公式参拝しようとしています。私たちは、このことに心底からの憤りを感じざるをえません。それは、単に靖国神社にA級戦犯が合祀されているからという理由だけではありません。なによりも、靖国神社は、明治以来、政府・支配層が民衆を侵略戦争に動員するための手段、軍国主義を正当化する重要な道具となってきたという事実からです。
靖国神社は、いまも「戦没者の追悼」に名を借りて、実は「戦死者を顕彰する」ことによって、戦死者を死後も利用し、一般民衆を「国を守るための尊い死」へ(日本国憲法下での「戦死」)へといざなう役割を果たそうとしているのです。
首相や閣僚、都知事等が靖国神社に参拝することは、この軍国主義の道具、シンボルを讃えること、さらには、侵略戦争、軍国主義、日本国憲法下での軍事力の増強や戦争準備、自衛隊員としての戦死等々を賛美することにほかなりません。公務員たる都知事や議員、閣僚による靖国参拝は、「政教分離」を定めた憲法20条はもちろん、戦争放棄を明記した憲法9条をも蹂躙するものです。これは、日本、アジア、世界の民衆の平和への願いを踏みにじることであり、近隣諸国の民衆に重大な脅威を与えるものです。
とりわけ石原都知事は、こともあろうに、8月5日、広島で平和記念式が行われるその前日に、「日本は強力な軍事国家になるべき」、「原爆の模擬実験は大いにやるべき」と発言するなど、近年、野蛮な言動を強めているだけに、都知事の参拝には、ことのほか重大な危機意識を持たざるをえません。
そこで私たちは、8.15を前に、靖国の役割を含めた日本の軍国主義、侵略戦争の歴史を真剣に振り返り、反戦・平和の意思を固めるとともに、石原都知事に靖国神社への参拝をとりやめるよう、強く要請するものです。
石原慎太郎東京都知事殿
2011年8月9日 8.9 都庁で平和学習会参加者一同
代表 増田都子全労協東京都学校ユニオン委員長 |
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