「扶桑社教科書問題は子会社のことで関係ない」フジ株主総会、答弁10/6/29

 本日、産経新聞社&扶桑社の親会社であるフジメディアホールディングズの株主総会がありました。私は以下の質問状を前もって送り、日枝久会長の回答を求めました。

2 当社の子会社・産経新聞社の問題について
 当社が40%の株式を所有し、日枝久会長が取締役をつとめる産経新聞社で、在日中国人を侮蔑する記事が掲載され、関係者の怒りを呼んでいる。

 4月25日付の書評欄に掲載された西尾幹二氏による河添恵子著『中国人の世界乗っ取り計画』の書評で、

「『ウソでも百回、百カ所で先に言えば本当になる』が中国人の国際世論づくりだと本書は言う。既に在日中国系は80万人になり、この3年で5万人も増えている。有害有毒な蟻をこれ以上増やさず、排除することが日本の国家基本政策でなければならないことを本書は教えてくれている」

 との記述がなされた。このような表現は、在日中国人を人間以下の「虫けら」として扱うものであり、明らかに人種差別にあたる。「有害有毒な」中国人を「排除」せよ、という表現は、暴力的な排外主義を助長するものにほかならない。こうした記述は、新聞倫理綱領に掲げられた「人権の尊重」、「品格と節度」に明確に違反している。

 当社は、産経新聞社の親会社として、その紙面にも当然ながら責任を負う。上記書評の人種差別、人権侵害にあたる表現について、当社としての見解を明らかにされたい。また、産経新聞社に対して、「新聞倫理綱領」に違反していると上記書評を削除し、謝罪を紙面で公表するよう指導されたい。また、上記書評事件に対する当社としての責任の取り方についても明示されたい。

3 扶桑社の教科書問題等について
 当社の全額出資子会社・扶桑社の教科書発行部門の赤字経営については、国民の共有財産である電波を借りて、国から免許を得て放送事業(子会社・フジテレビジョン等)を行っている当社にとって、極めて重大な経営上の問題である。

扶桑社は、第69回提示株主総会通知の事業報告でも明記しているように「営業損失は縮小したが、黒字化には至らなかった」(7頁)とされている。
よって、

@扶桑社の詳細な業績の開示を求める。とくに教科書事業の売上げ、営業損益、最終損益について詳細に説明されたい。

さらに、
A現時点での扶桑社の歴史教科書の採択率、採択校について詳細に説明されたい。

4 扶桑社の教科書問題をめぐる疑惑について
 扶桑社の歴史教科書問題について、月刊誌『自由』(自由社)の08年2月号で、日枝会長にからむ重大な疑惑が指摘され、第67回株主総会、第68回株主総会でも質問状にその件が明記されていた。しかし、総会では、この件については全く具体的な回答・説明がなされず、会社法に反する対応に終始していた。改めて、この件に関する@〜Dについて説明、回答を求める。

 上記藤岡信勝・拓殖大学教授は、同誌掲載の座談会「『自由』五十年の歩み 言論の自由を守った闘い」の中で、以下のような驚くべき経緯が明らかにしている。

屋山氏が安倍総理に電話して、「扶桑社が教科書をやめるということになった。これは大変困る。何とかしてくれないか」と頼んだ。安倍総理から、「誰に言えばいいのか、誰がポイントなのか」と聞かれたので、「それはフジサンケイグループ会長の日枝さんだ」と答えた。それで、安倍総理が、日枝さんに働きかけた。屋山氏が安倍総理に電話して一夜明けた翌日には返事が来て、日枝さんが三億円出すことになった。扶桑社の子会社として育鵬社というのをつくって、すぐに社名が決まったがどうかは分かりませんが、それで出すという話が決まった。

そういうことを私は屋山さんから直接聞きました。安倍さんは、「つくる会」の教科書を念頭において、扶桑社がもう採算が合わないからという口実で出さないというふうに理解していたはずです。安倍さんは、自民党若手の教科書議連の中心メンバーでしたし、安倍内閣時代に「つくる会」の教科書がなくなるという事態を危惧して動かれたのだと思います。(同誌44、45頁)。
  
 以上の記述については去年の株主総会で「事実無根」と回答された。

@ 事実無根とすると、当社または日枝会長は、自由社に抗議して、訂正、謝罪等を要求したか? 
A これらの件について、当事者とされた日枝久会長自身の答弁を求める。

B そもそも、当社の子会社・扶桑社が「新しい歴史教科書」「新しい公民教科書」を刊行し、その採用を画策したことで、中国、韓国から激しい反発を招き、国際問題にまで発展してきたことは事実である。扶桑社は、文部科学省の指導にも従わず、事前に教科書を提示するなどの無法な販売作戦を展開していた。公共の電波を借りて、政府の許可を得て営業しているテレビ局の事業として、こうした扶桑社の行為がふさわしかったのかどうか、見解を示されたい。

C しかも、扶桑社は07年2月「次回の教科書は、これまで以上に広範な各層からの支持を得られるものにしなくてはならない」(朝日新聞07年6月1日付)として、これまでの教科書の内容を自己批判し「新しい歴史教科書をつくる会」と絶縁する状態となった。

  にもかかわらず、扶桑社は平成20年5月8日付「教科書発行のご案内」という文書において、「現行版扶桑社教科書の平成22・23年度分は引き続き扶桑社から継続発行します」と通知を出している。「つくる会」HPに公開されているところによれば、「つくる会」と絶縁するに当たり、扶桑社自身が現行版扶桑社教科書は「各地の教育委員会の評価は低く、内容が右より過ぎて採択がとれない」と断言したということである。

 扶桑社自身が、「右より過ぎ」即ち、「右」に偏向と認めた現行版教科書を今後2年間も発行し続けるとは、「在庫一掃」のためとしか考えられないが、教科書を使う中学生に対し、あまりにも無責任かつ無道徳というべきである。よって

ア、このような同社の姿勢について、子会社に責任を持つべき親会社としての日枝会長自身の答弁・説明を求める。
イ、また、こうした「右より過ぎ」という問題教科書の出版を許し、さらに今後2年間も発行継続を許すことに対し、親会社としての経営責任・社会的責任についても明らかにされたい。

D さらに、扶桑社全額出資の育鵬社で、教科書事業を継続することが、当社にとっていかなる経営上のメリットをもたらすのかについても、日枝会長自身の見解を求める。



 去年は、会社側は株主の質問に対して誠実に回答する義務を持つはずであるのに、私の質問状に対しては全く全体の場での回答はありませんでした。そこで、怒りの会場質問をしたのですが、今年は、一応、全体の場で「『扶桑社教科書問題について』の質問があったので回答する」としたのは、ほんの少々の改善でしたが・・・中身は全くないものでした。

 いわく「扶桑社は子会社であるので、子会社の役員に任せている」・・・つまり、教科書問題など関係ない!? と・・・何という無責任なことを。しかも、産経新聞記事については、全く答えません。そこで、今年も怒りの会場質問。

「なんと言う無責任な回答ですか・・・扶桑社は100%子会社ではありませんか。親会社としての社会的責任があるでしょう。扶桑社の赤字は教科書からきているのではないですか? 自分で『右よりダメ教科書』と認めておきながら、なお、来年度も売り続けるとは無責任きわまるではありませんか。
 
 ただ、去年は一切無視したのが今年は無内容ではあっても回答したのはチョコッとだけ進歩したとはいえますが、産経記事について全く回答がないのはなぜですか? 日枝会長自身が産経新聞社の取締役なのですから、会長自身の回答を要求します」

 しかし、日枝会長は議長席から「個人で決定しているのではなく機関で決定しているのですから○○(名前を忘れてしまいました)に答えさせます」として、絶対に自分では回答しないのです。で、○○が言うことには

「扶桑社の赤字は出版事業全体のことで、教科書は赤字になっていません。教科書内容については、子会社のプロジェクトですから、答える立場ではありません。産経記事については、一つ一つの記事に親会社は干渉しません。独立ジャーナリズムの領域を犯すことはできません」とか・・・

 「本当に扶桑社歴史・公民教科書部門は赤字になっていない」というのなら、堂々と「3-@、A」に回答すればいいではありませんか? そして、もし、本当に扶桑社教科書部門が黒字であるとするなら、自分自身が「右より過ぎダメ教科書」と認めた教科書を、なお売り続ける、というその社会的無責任さにあるでしょう・・・その在庫一掃セールに協力して扶桑社教科書を採択し続ける東京都教育委員会や杉並区教育委員会その他こそが問題ですが・・・

 それに、本当に黒字であり「良い教科書である」という自信があるのるなら、別の教科書を発行するために「育鵬社」などという子会社(フジ(株)にすれば孫会社)を、なぜ、わざわざ作る必要があるのでしょうか?

 また、在日中国人を「有害有毒な蟻」「排除を」などとする、あまりにひどい誹謗中傷の見本であり、明白に新聞綱倫理領違反である産経紙記事について指摘されても、産経の取締役が「独立ジャーナリズムに介入できない」!?って、どういうことでしょうか?

 私の他にもこの株主総会で発言した株主は、ほとんどが会社側批判でした。中でも、週刊文春が報じた「岩手めんこいテレビに関してフジ(株)が小沢一郎に金を渡した」とする疑惑について「これは本当か」と一人の株主の方が質問した時、日枝会長がしばらくの間、フリーズ!? してしまったのは可笑しかったです。これに関しての質問と回答の練習はしていなかったのでしょうか?

 ま、この回答も、固まった状態からしばらくして我に帰った日枝会長が答えさせた○○が言うことには「言われている人物にあったことはありません。不適切な金の支出はありません。」で終わりましたが・・・

 こんなにも無責任極まりない人々によって、扶桑社教科書は今も子どもたちに押し付けられ続けているのです・・・