前進座「木槿(むくげ)の咲く庭」を観にいきませんか 10/3/27

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 昨夜、吉祥寺の前進座劇場で件名公演を観ました。日本の植民地統治下、大邱(テグ)の近くの村に住むテヨル(10代後半)とスンヒィ(10代前半)の兄妹を中軸に、学校の教頭をしているアボジと優しいオモニ、印刷業を営みながら抗日運動をしている叔父の5人家族の物語。年代は、1940年から日本敗戦の1945年。

 日本人としては、正直、見ていて、とても心の痛いものがありました。目の前で、日本(憲兵、警察官)が朝鮮半島の人々に何をしたか、実に生々しく展開されるのですから・・・

 言葉を奪い、個人のアイデンテイーの中核である名前を奪い、食料を奪い(これは、そのものが出るわけではありませんが、「もう、食べるものがない」という状況が日常生活の中で自然に出ていました)、命を奪う=皇国臣民として若者に志願させ「日本人として名誉の戦死」を遂げたことを祝わせる・・・

 おまけに花まで奪った!? とは・・・一つの花は一日でしぼんでしまうけれど、毎日、次々と咲き続ける生命力と美しさを象徴する花として朝鮮半島の人々に愛され、どの家の庭にも植えてある木槿=無窮花(ムグンファ)を、朝鮮総督府は「伐採せよ。そして、代わりに桜の木を植えよ」と命令していたのですね・・・この事実は、初めて知りました。

 今まで、日本の朝鮮支配の年表など見てきましたが、この「木槿、伐採命令」については見た記憶がないので載せてほしいような・・・「木槿=無窮花=朝鮮の人々の魂」を切り倒して捨て去り、「桜=敷島のやまとごころ=大和魂」を強制的に植えつけようとする・・・これは、本当に「皇国臣民化」を強制する日本の植民地支配政策の、とっても分かりやすい象徴のような気がします。

 この家の木槿はオモニが嫁入りした時に記念に植えられたものでした。テヨルとスンヒィの兄妹は小さな木槿を隠して鉢に植え、一生懸命、水遣りをして育てるのです。「オモニのために」と二人は語りますが、それは、民族の誇りを持つ少年と少女が無意識のうちに、決して「民族の魂」を奪われないためにした行為・・・と私には感じられました。

 日本人憲兵と警官は、捕らわれないように失踪した叔父さんの捜索のためにこの家に乗り込み、スンヒィが、愛する叔父のいない寂しさを綴った詩を書いていた雑記長を見つけて燃やしてしまうことまでしたのです。その時、アボジはスンヒィに言いました。

「紙を燃やせても、言葉は焼けない。言葉を封じても、思いは消せない」・・・

 日本人としては本当に心が痛くなる劇です。でも、理不尽な異民族の権力による理不尽な暴虐に、誇りある民族として、強い絆を持つ家族として、隣人として、時にはお互いの無事を願うあまりに喧嘩もし傷つけ合いながらも、助けあい、励ましあう姿に、人間としては、とても強い共感を抱くことができました。
 原作者は在米韓国人二世のリンダ・スー・パークという方で、彼女が「幼少の頃から聞いてきた母親の体験を元に創作した」というだけあって、登場人物たちみんなに血が通い、ウソっぽさが微塵もない本当にリアルなお話でした。

 実は、私が中学校社会科教員になって10年ぐらい経ったころだったか、戦争学習を終えて書かせた意見・感想の中に、ある生徒が「僕の母は、テレビとか、ラジオとかで『海ゆかば』の歌が流れると、すぐに消してしまいます。僕が『どうして?』と聞いたら、『戦争中、戦死者がたくさん出たとき、必ずその歌が流れて、もう、聞くのはいやだ』といっていました」と書いていたことがありました。

 でも、私は『海ゆかば』の詞は、もちろん知っていましたが、これまで、ちゃんと歌われているのを聞いたことがなかったので、メロディーは知らなかったのでした。この劇中で何回か、この歌を日本軍憲兵の前で『愛国班』(1938年の国民精神総動員朝鮮連盟の底辺組織として十戸単位に組織されたもの)の人々が歌わされるのを聞いて、「そうか・・・こういうメロディーだったのか・・・」と初めて知りました。やっぱり、なんとなく、心が痛くなる曲ですねぇ・・・防人の歌を20世紀に歌わせたんですし・・・

 劇場に扉に入る前のホールのパネルに「『韓国併合100年』市民ネットワーク」が製作した「『韓国併合100年』写真展」の写真が40枚くらい、展示してあり、この物語の時代背景が理解しやすいようになっていました。
ということで、

皆様
 別に前進座の方たちから「宣伝してください」と頼まれたわけではありませんので一円ももらっていません(笑)が、本日27日、明日28日、いずれも午後2時から公演がありますので、ご都合がつきましたら観劇にいらっしゃったらどうでしょうか! 本当は麻生前首相に、一番、お勧めしたいのですが(笑)・・・

地図は以下です。
http://www.zenshinza.com/gekijo/access.html