株式会社フジ・メディア・ホールディングス
代表取締役会長 日枝 久殿
株式会社フジ・メディア・ホールディングス第68回定時株主総会に対する |
1 扶桑社の教科書問題に関する訴訟等について
当社の全額出資子会社・扶桑社は、「新しい歴史教科書をつくる会」主導の
中学歴史教科書をめぐって、同会の藤岡信勝会長(拓殖大学教授)らから発行差止訴訟を提起され、係争中となっている。同会は、自由社から「細かな文章表現まで扶桑社版とほぼ同じ内容」(朝日新聞09年4月9日付夕刊)の中学歴史教科書を発行することにしており、「代表執筆者も内容も変わらない2冊が存在する異例の状態となる」とか、扶桑社が「逆提訴する可能性がある」(朝日同)とか、「泥仕合」の様相とされている。
この訴訟は、国民の共有財産である電波を借りて、国から免許を得て放送事業(子会社・フジテレビジョン等)を行っている当社にとって、極めて重大な経営上の問題である。よって、
@この訴訟の見通しや逆提訴などについて、子会社に責任を持つべき親会社としての日枝会長自身の答弁・説明を求める。
しかも、扶桑社は、第68回提示株主総会通知の事業報告でも明記しているように「減収」、「営業損失が拡大した」(7頁)とされている。よって、
A同社の詳細な業績の開示を求める。とくに教科書事業の売上げ、営業損益、最終損益について詳細に説明されたい。
上記朝日記事によれば、04年版の歴史教科書、公民教科書の採択率は、それぞれ0.4%、0.2%に過ぎないとされている。よって、
B現時点での採択率、採択校について詳細に説明されたい。
2 扶桑社の教科書問題をめぐる疑惑について
扶桑社の歴史教科書問題について、月刊誌『自由』(自由社)の08年2月号で、日枝会長にからむ重大な疑惑が指摘され、昨年の第67回株主総会に対する他株主からの質問状にもその件が明記されていた。しかし、総会では、この件については全く回答・説明がなされず、会社法に反する対応に終始していた。改めて、この件に関する@〜Hについて説明、回答を求める。
上記藤岡信勝・拓殖大学教授は、同誌掲載の座談会「『自由』五十年の歩み 言論の自由を守った闘い」の中で、以下のような驚くべき経緯が明らかにしている。
屋山氏が安倍総理に電話して、「扶桑社が教科書をやめるということになった。これは大変困る。何とかしてくれないか」と頼んだ。安倍総理から、「誰に言えばいいのか、誰がポイントなのか」と聞かれたので、「それはフジサンケイグループ会長の日枝さんだ」と答えた。それで、安倍総理が、日枝さんに働きかけた。屋山氏が安倍総理に電話して一夜明けた翌日には返事が来て、日枝さんが三億円出すことになった。扶桑社の子会社として育鵬社というのをつくって、すぐに社名が決まったがどうかは分かりませんが、それで出すという話が決まった。そういうことを私は屋山さんから直接聞きました。安倍さんは、「つくる会」の教科書を念頭において、扶桑社がもう採算が合わないからという口実で出さないというふうに理解していたはずです。安倍さんは、自民党若手の教科書議連の中心メンバーでしたし、安倍内閣時代に「つくる会」の教科書がなくなるという事態を危惧して動かれたのだと思います。(同誌44、45頁)。
@ 以上の記述は事実か?
A 事実だとすると、安倍晋三首相(当時)から、どうような働きかけがあったのか?
B それに対して日枝会長は、どう答えたのか?
C 育鵬社(2007年8月1日設立。扶桑社全額出資。資本金=3億円)の資本金3億円と、「日枝会長が出すことになった」とされている3億円は符合するが、安倍首相の要請で、そうしたのか?
D 事実でないとすると、当社または日枝会長は、自由社に抗議して、訂正、謝罪等を要求したか?
E これらの件について、当事者とされた日枝久会長自身の答弁を求める。
F そもそも、当社の子会社・扶桑社が「新しい歴史教科書」「新しい公民教科書」を刊行し、その採用を画策したことで、中国、韓国から激しい反発を招き、国際問題にまで発展してきたことは事実である。扶桑社は、文部科学省の指導にも従わず、事前に教科書を提示するなどの無法な販売作戦を展開していた。公共の電波を借りて、政府の許可を得て営業しているテレビ局の事業として、こうした扶桑社の行為がふさわしかったのかどうか、見解を示されたい。
G しかも、扶桑社は07年2月「次回の教科書は、これまで以上に広範な
各層からの支持を得られるものにしなくてはならない」(朝日新聞07年6月1日付)として、これまでの教科書の内容を自己批判し「新しい歴史教科書をつくる会」と絶縁する状態となった。
にもかかわらず、扶桑社は平成20年5月8日付「教科書発行のご案内」という文書において、「現行版扶桑社教科書の平成22・23年度分は引き続き扶桑社から継続発行します」と通知を出している。「つくる会」HPに公開されているところによれば、「つくる会」と絶縁するに当たり、扶桑社自身が現行版扶桑社教科書は「各地の教育委員会の評価は低く、内容が右より過ぎて採択がとれない」と断言したということである。
扶桑社自身が、「右より過ぎ」即ち、「右」に偏向と認めた現行版教科書を今後2年間も発行し続けるとは、「在庫一掃」のためとしか考えられないが、教科書を使う中学生に対し、あまりにも無責任かつ無道徳というべきである。よって
ア、このような同社の姿勢について、子会社に責任を持つべき親会社としての日枝会長自身の答弁・説明を求める。
イ、また、こうした「右より過ぎ」という問題教科書の出版を許し、さらに今後2年間も発行継続を許すことに対し、親会社としての経営責任・社会的責任についても明らかにされたい。
H さらに、扶桑社全額出資の育鵬社で、教科書事業を継続することが、当社にとっていかなる経営上のメリットをもたらすのかについても、日枝会長自身の見解を求める。
|