05年盧武鉉大統領3・1演説 09/5/24 |
盧武鉉前大統領の自殺という報道に接し、改めて05年3月1日の盧武鉉演説全文を見てみました。不正資金疑惑はとても残念なことで、やはり、国民の信望を失っては生きていけない、ということだったのでしょう。でも、この3・1演説はとても格調が高く、韓国の歴代大統領の中で大統領在職中に、これだけ率直に日本人に対して「両国民が真に和解するために、どうしたらいいかを考えてほしい」と呼びかけられたのは盧武鉉氏だけだったのではないでしょうか。 演説中、「日本の知性に呼びかけます」とあるとうり、日本人には歴史に残り、永遠に考えさせられる内容だと思います。この演説の価値は、与謝野晶子がアジア太平洋戦争の時には盛んに好戦的な歌を作った事実はあっても、日露戦争の時の「君死にたまふことなかれ」の歌の価値は減じないのと同じだと考えます。 この演説は、韓国国民全体の総意として、特に来年8月29日で大日本帝国による韓国「強制」併合から100年になる現在、「両国関係の発展には日本政府と国民の真摯な努力が必要です。過去の真実を糾明し、真心を持って謝罪して、賠償することがあれば賠償し、そして和解しなければなりません。これが、全世界がおこなっている過去史清算の普遍的な方式であります。」ということを、日本人は真剣に考えるべき時だと思います。 以下、ご存知の方も多いとは思いますが、私が中学生の教材として歴史の授業で使い、生徒とともに「両国の真の和解のためにはどうしたらいいか」を考える良い資料となった(そして、都教委による私の「公務員不適格」としての分限免職に至る端緒となった)05年盧武鉉大統領3・1演説をご紹介します。 尊敬する国民の皆さん、独立有功者と内外貴賓の皆さん。 このような3.1運動の偉大な精神を受け継ぎ、二度と再び100年前のような過ちを繰り返さないことが、愛国先烈に対する道理であり、3.1節に思い起こす私たちの誓いであります。国のために犠牲となり、民主主義と繁栄の礎石を据えてくださった愛国先烈の皆さんに頭をたれて敬意を表します。独立有功者と家族の皆さんに深い尊敬と感謝の言葉を贈ります。 国民の皆さん。 私は去る日曜日、独立記念館を訪れました。旧韓国末期に開化を取り巻き、意見の差が論争を超えて分裂に至り、ついには指導者たちが国と国民を裏切った歴史を見ながら、今日、私たちが何をすべきかを深く考えてみました。併せて、わが国土で日本と清国、ロシアが戦争をおこなった状況の中で、力無き私たちがどちらかの側に立ったとしても、何が変わったのかを考え、国力の意味を再び思い起こしてみました。 そして、今日の大韓民国が本当に誇らしく思われました。もう私たちは、100年前列強の狭間で何ら変数にもなれなかった、そんな国ではありません。世界に遜色の無い民主主義と経済発展を成し、自らが守り得る豊かな力を持っています。東北アジアの均衡者としての役割を担うことのできる国防力を育てています。先烈の皆さんも今、私たちの姿に感心されていることでしょう。 国民の皆さん。今年は韓国と日本の国交正常化40周年となる特別な年であります。一方では、韓日協定文書が公開され、未だ解決されていない過去問題が蘇り、また違った難しさが提起されています。この間、韓日関係は法的にも政治的にも相当な進展を成してきました。95年に村山日本総理は、《痛切な反省と謝罪》をおこなったし、98年には金大中大統領と小渕総理が新韓日関係パートナーシップを宣言しました。2003年には私と小泉総理が、《平和と繁栄の東北アジア時代のための共同声明》を発表しました。 韓日両国は、東北アジアの未来を共に切り開く共同運命体であります。互いに協力しながら、平和定着と共同繁栄の道を歩まなければ国民の安全と幸福を保障することのできない条件の上に立っています。法的、政治的関係の進展だけでは両国の未来を保障することはできないでしょう。もしそうであるならば、やるべきことをすべてやったとは言うことはできません。それ以上の実質的な和解と協力の努力が必要であります。真実と誠意を持って、両国の国民間を塞いでいる心の障壁を崩し真の隣人として生まれかわらなければなりません。 フランスは反国家行為をおこなった自国民に対しては、峻厳な審判を下しましたが、ドイツに対しては寛大に手を繋ぎヨーロッパ連合の秩序を創ってきました。昨年シラク大統領は、ノルマンディ上陸作戦60周年記念式に初めてドイツの総理を招待して、《フランス人は貴方を親友として歓迎する》とし、友情を表しました。 わが国民もフランスのように寛大な隣人として、日本と共になりたいという願いがあります。この間わが政府は、国民の怒りと憎しみを煽らないように節制し、日本との和解協力のために積極的な努力をおこなってきました。実際にわが国民は、よく自制して事理をわきまえ分別を持って対応していると思います。私は、この間の両国関係進展を尊重し、過去史問題を外交的争点として捉えないと公言したことがあります。そして、この考えは今も変わりはありません。過去史問題が提起される度に、交流と協力の関係が再び止まり、両国間で葛藤が高まることが未来のためによくないと思ったからであります。 しかし、私たちの一方的な努力だけでは解決できることではありません。両国関係の発展には日本政府と国民の真摯な努力が必要です。過去の真実を糾明し、真心を持って謝罪して、賠償することがあれば賠償し、そして和解しなければなりません。これが、全世界がおこなっている過去史清算の普遍的な方式であります。 私は、拉致問題に因る日本国民の怒りを充分に理解しています。同じように、日本も立場を代えて考えて見るべきです。強制徴用から日本軍慰安婦問題に至るまで、日帝36年の間に数千、数万倍の苦痛を受けたわが国民の怒りを理解すべきであります。 日本の知性に再び呼びかけます。真の自己反省の土台の上で、韓日間の感情的わだかまりを取り除き、傷を癒すことを進んでおこなうべきであります。これこそが、先進国であることを自負する日本の知性らしき姿であります。そうしなければ、過去のくびきから逃れることはできません。いくら経済力があり軍備を強化しても、隣人の信頼を得て国際社会の指導的国家となるには難しいでしょう。ドイツはそうしました。そして、ふさわしい待遇を受けています。彼らは自ら真実を明らかにし、謝罪して補償する道徳的決断を通じてヨーロッパ連合の主役となることができました。 尊敬する国民の皆さん。韓日協定と被害補償問題に関しては、政府も不足な点があったと思います。国交正常化自体は、やむを得ないことだったと思います。いつまでも国交を断絶しているわけにもいかず、私たちの要求をすべて貫徹できない事情もあったでしょう。しかし、被害者としては国家が国民個々人の請求権を一方的に処分したことを納得するのは難しいと思います。遅くなりましたが、今からでも政府はこの問題を解決することに積極的な努力をするでしょう。 国民皆さんの意見を集め、国会と協議して適当な解決策を模索していくでしょう。すでに、総理室に民官共同委員会を構成して、いくつかの法案を検討しており、より包括的な解決のために国民諮問委員会の構成を準備しています。併せて、請求権問題の他にも未だ埋もれている真実を明らかにして、遺骸を奉還することなどを積極的におこなうでしょう。日本も、法的問題以前に人類社会の普遍的倫理、そして隣人間の信頼の問題という認識を持って積極的な姿勢を見せるべきであります。 国民の皆さん。3.1運動の精神を思い起こして、先烈たちが夢見た先進韓国の未来に向かい力強く進んでいきましょう。日帝の銃剣に立ち向かい立ち上がった先烈たちの勇気と、すべてを乗り越え一つとなった大同団結の精神が私たちの前途を導いてくれるでしょう。(蔡鴻哲訳) |