「たたかう!社会科教師」DVD&本の感想 09/4/30

件名感想をブログや、通信でご紹介くださった方がいます。転載許可を得ましたので、以下、ご紹介します。

●「たろじいのブログ」
DVD 「たたかう!社会科教師 増田都子取材記録」をみて
http://pub.ne.jp/tarojii/?entry_id=2104814

 東京で,ひとりの女性教師が,不当な免職(解雇)の取り消しをもとめて裁判をたたかっている。韓国とイギリスのテレビ局が取材した4つの番組を収録した,22分,200円の軽い DVD だが,内容は重い。

 なぜ重いのだろうか? それは日本のテレビ局がほとんど報道していないこと自体の重さであり,東京都教職員組合足立支部が所属組合員をうらぎった誤りの重さであり,日本の右傾化がいよいよ力をおびてきたことの重さではないだろうか? 逆にいえば,それにもかかわらず断固としてたたかう増田都子さんの,自立した個人としての人格の重さとも感じられる。

 2005年に韓国の MBC テレビが報道した番組のなかに,こんな書状が紹介される。これは卒業する教え子から増田さんに贈られたもので,毛筆の楷書体で,ていねいに書かれている。

「私達は三年間を通して勉強の必要性を学びました。特に私達にとって大きなプラスとなったのは二年生から社会でやり始めた紙上討論です。そこで他人の意見と自分の意見を照らし合わせ深く考えさせられました。自分の愚かな行動や考え方に気付いた人もいます。また自分の行動や考え方に自信をもてるようになった人もいます。私達はまっとうな判断力を身につけ,社会に適応できるようになってきています。勉強とはそうなるためにするものだと思います。平成八年度第五十回卒業生一同」

 実は、これは1997年3月の足立区立第十二中学校卒業式の答辞だそうだ。答辞作成実行委員会の生徒たちが、卒業学年の全生徒に「3年間で印象に残ったこと」というアンケートを取り、そして、こんなふうにまとめて卒業式の全来賓・全生徒・全教職員の前で読み上げてくれた。それだけでなく,この答辞をコピーして全学年の教師にプレゼントしてくれたそうだ。増田さんは「私の生涯最高の宝物です!」と語られている。

 社会科の授業で歴史の真実を教えようとしたために,2次にわたり,計3年間も,教職員研修センターの密室で懲罰の「研修」を強要され,精神的拷問にさらされた。そのうえ「反省」の強要を拒否したために「公務員不適格」として免職を発令されるということに,正当性があるとはおもえない。

 増田さんひとりの問題ではない。日本がいま流されつつある道への警告として,すべての人の問題として,とらえなければならないだろう。日本でいくつも活動しているはずの国連 NGO は,この問題を国連人権理事会に報告したのだろうか?



●増田都子さんのたたかい  

増田都子さんの闘いを自ら著した本「たたかう! 社会科教師」(社会批評社)を一気に読み終える。増田さんの闘いを一言で紹介するのは憚れるがごく簡単に紹介すると、社会科の授業の一貫として行った紙上討論の発展として、韓国の元ノ・ムヒョン大統領に宛てた増田さんの手紙の中に「都議らを歴史偽造主義者」と書き、それを生徒に紹介したとして、教育公務員として不適切と断定され、東京都教職員研修センターで研修させられたが、全く反省の色がないと2006年3月にはついに分限免職されてしまった。

 増田さんは当然納得できないと裁判に訴え闘い続け、この6月11日には東京地裁で判決が出ることになっている。詳しくは「たたかう! 社会科教師」を是非読んでいただきたい。増田さんの果敢な文章表現にはここまで書くのかと私もたじろぐところあったが、逆にここまで書かなければならないほど増田さんは怒りに満ち、何者も恐れることなく闘っているということだろう。それこそ現代のジャンヌ・ダルクあるいは柳寛順とでも言おうか。

 この本では特に、この闘いの正当性と歴史的な意義を森正孝氏(映画『語られなかった戦争 侵略』の監督)ぁ・・裁判所へ提出した意見書でご覧いただきたい。さらに増田さんの闘いが海外、特に韓国ではどう注目されているかを描いた「第五章 海外の人々の反応」 は読んでいても感動的。

 海外で放送されたニュースのDVDもあるので希望者は私または増田さんへ直接どうぞ。増田さんの闘いは日本のマスコミではほとんど取り上げられず、自分としては何ができる のか考えているところである。

 増田さんの好きな 歌は「We  shall overcome」のようだが、 私は彼女のために『流れる水と岩の歌』を贈ろう。

「 かれのたたかいはかれ一人のものではない  君のたたかいは君ひとりのものではない  一人が打ち負かされれば別の一人に引き継がれ  一つの闘いが躓けば新しい闘いが起こる  川の水はたえまなく流れ ついには岩を消し去る  川は僕ら岩は敵 最後はきっと僕らが勝つ  その日名も無い野の花々を浮かべて 川は泡立ち歌っているだろう」林光 詞・曲