学級崩壊のような都議会文教委員会の傍聴記 09/2/19

 以下、先日の都議会文教委員会を傍聴した方からの傍聴記です。転載許可を得ましたので、お知らせします。



<東京都議会文教委員会傍聴記>
 2月16日、鎌田慧さんを代表とする80名が提出した2請願についての審議を、東京都文教委員会で傍聴した。請願の内容は、(1)増田都子さんの個人情報を漏洩した賠償金は都民の税金からではなく、都教委の違法行為者自身が支払うこと、(2)都教委に情報漏洩を教唆した3都議は謝罪せよ、というものだった。

 すでに、13日に、「東京都個人情報保護条例は個人情報を都議に提供してはならないとなっていることを確認する」と決議せよ、という請願は同会で賛成者(共産党の古館和憲)1人で否決されていた。

 初めて東京都の文教委員会を傍聴した者にとって驚きだったのは、委員会場が、まるで学級崩壊したタチの悪いクラスのように、目に余る雑言、ヤジ、あるいはせせら笑いによる発言妨害が多いということだった。まともに議論しようとしないこうした行動は、とりわけ、自分と反対の意見を持つ古館議員に対して集中して行なわれていた。

 このように議員自らは「不良な」態度を取っているのに、傍聴席から少しでも批難めいた声があがると、議長に向って「議長! 傍聴席を静かにさせろ!」とわめく。都議会文教委員会は、もっとレベルの高い人たちで構成されていると思っていたので、こんな状態にはびっくりした。

 さらに、議論の仕方、中味の質が低かった。増田さんの個人情報を秘守義務に反して都教委が都議に提供したことの是非が問題なのに、副議長の服部ゆくお氏は、増田氏(自民)は「偏向教育をする」教員で、あのように「自分の考えを押しつける教育によって、一人の女生徒を傷つけ、登校拒否から転校にまで追い込んだ許すべからざる教師」であり、「だから免職にもなったのだ」と増田さんを個人攻撃し、それにより個人情報を3都議に流すことは必要だったかのような印象を与えようとした。

 しかし、これは、「生徒に真実を教え考えさせる教員」を怖れる人たちが捏造しマスコミが増幅した増田さん像であって、都議会議員ともあろう者が、それをなぞっているだけというのは情け無い。「事件」以降、増田さんは『教育を破壊するのは誰だ! 【ドキュメント】東京・足立十六中学事件』(社会評論社)を書き、あるいは裁判で事実を明らかにしてきた。

 また、女生徒の不登校の原因については、野田正彰・関西学院大学教授が裁判所に提出した精神鑑定意見書により、子どもの気持ちを汲まない母親の方にこそ責任があったことを私達は知っている。都議のなかに、せめて、現場について書かれたこうした文書に目を通した上で発言する人が居て欲しかった。 
 
 都教委側の陳述は、「3都議から個人情報提供の教唆はなかった、情報提供は、すでに実名報道もされていたので、行政機関として自らの裁量で行なった」というものだった。古館氏から「情報提供には恣意性がある、ある人には情報保護を盾に提供を拒否し、ある人には漏洩してはばからない、もっと記録を残す等個人情報保護に努めるべきだ」という発言があった。

 しかし、議論はそれまでで、賛否が問われ、賛成は古館氏一人で否決となった。

 文教委員会では、他に、例えば、東京都の公立学校生徒数は数万人規模で増えている、しかし、教職員数は減らされている、これは「まず公務員削減ありき」の発想ではないか、30人学級を実施してないのは東京都だけだ、などの意見も出されたが、突っ込んだ議論はされなかった。自分の選挙区の問題にしか目が向かないのか? 人口1300万になる東京都の財政は一国といってもいい位の規模である。東京都議会文教委員会は、日本、世界を視野に入れて、次世代のことを真剣に考えた質の高い議論をしてほしい。