KOREAN YOUTH MADANG 09/2/8
 昨日2月7日「2.8独立宣言から90年◆KOREAN YOUTH MADANG−在日するコリアン青年の可能性と役割を探る−」というイベントに行ってきました。在日の若者たちの集まり! という魅力と、実は不勉強のため2.8独立宣言についてよく知らなかったので映画を見せてもらえること、さらに、『パッチギ』『フラガール』『ラストゲーム最後の早慶戦』のプロデューサー李鳳宇さんがゲストという豪華そう!? な内容に惹かれました。その上、「どなたでも参加できます(コリアン以外の方のご来場を歓迎します)。ぜひおこし下さい!」という文句に、YOUTHでないコリアン以外の私も大丈夫そうと・・・

 さて、会場の在日本韓国YMCAの入り口にはいろいろな方から花輪が送られていましたが、李明博・韓国大統領からのものもありました。聞いてみましたら、毎年、送られているそうで、本国でも在日コリアン青年たちは期待されているのですね。

 2.8独立宣言は、1919年の2月8日に東京の朝鮮基督教青年会館、つまり、現在の在日韓国YMCAにおいて、日本に留学していた11人の朝鮮人青年が日本の官憲の弾圧を恐れず朝鮮青年独立団代表として発表したものでした。これが本国の3・1独立宣言につながっていく・・・私は恥ずかしながら、この全文を読んだことがなかったので、映画の中で姜徳相先生も言われていましたが、初めて読んで90年前のその文章の格調高い内容に打たれました。以下、最後の部分だけ紹介します。


「 最後に東洋平和の見地からみても、かの最大の脅威であったロシアはすでにその軍事的野心を放棄し、正義と自由にもとづき新国家の建設に従事している。中華民国もまた同様である。さらに今後国際連盟が実現すれば、再び軍国主義的侵略を敢行する強国はなくなるであろう。とすれば韓国併合の最大の理由はすでに消滅している。これより、もし朝鮮民族が無数の革命の乱をおこすとすれば、日本に合併された韓国は却って東洋平和を乱す禍根となるであろう。わが民族はただ一つの正当な方法によってわが民族の自由を追求する。

 もしこれが成功しなければ、わが民族は生存の権利のために自由な行動をとり、最後の一人に至るまで必ずや自由のために熱血をそそぐであろう。これがどうして東洋平和の禍根とならないであろうか。わが民族は一兵も持っていない。わが民族は兵力をもって日本に抵抗する実力はない。しかしながら、日本がもしわが民族の正当な要求に応じなければ、わが民族は日本に対し永遠の血戦を宣布せざるを得ない。

 わが民族は高度の文化を持ってからすでに久しい。そしてまた半万年にわたる国家生活の経験を持っている。たとえ多年の専制政治の害毒と境遇の不幸がわが民族の今日を招いたものであるにせよ、今日より正義と自由とにもとづく民主主義的先進国の範に従い、新国家を建設するならば、わが建国以来の文化と正義と平和を愛好するわが民族は必ずや世界の平和と人類の文化に対し貢献するであろう。

 ここにわが民族は日本および世界各国に対して自決の機会を与えることを要求する。もしその要求が入れられなければ、わが民族はその生存のために自由な行動をとり、わが民族の独立を期成せんことをここに宣言する。」


 このドキュメンタリー映画はNHKなどでぜひ広く放送してほしいものだ、と思いました。日本人は知らなさ過ぎで・・・この映画の後で挨拶された金宗洙(キム・ジョンス)在日本大韓民国青年会会長の「われわれは日本社会のために何ができるか、本国社会のために何ができるか、考えていきたい」という最後の言葉には感銘を受けました(余談ながらハンサム・ボーイ!)。

 ゲストスピーカーの李鳳宇(リ・ボンウ)さんのお話で、とても印象に残ったものをあげます(この方も余談ながらハンサム!?)。私の記憶なので、間違っていたらご寛恕を・・・

「学生時代、フランスにタダで留学したいと思って、朝日新聞主催のフランス語弁論大会に応募した。1位になると外務省の給費留学生となれるので、すごく努力をした。数百人の応募者の中から11人の本選出場者に選ばれた。それでさらに練習していたある日、朝日新聞社から電話がかかってきて『1位になったら辞退すると約束してほしい』ということだった。それまで、直接『在日』ということを意識したことがなかったが、この時初めてそれを意識した。結局、本選には出ず、私費で留学した。

 パリではドイツ人の留学生と親しくなった。日本映画際で彼は夏目雅子の主演した『鬼龍院花子の生涯』を見て、ひどく感動し、それからは『雅子、雅子』で、結婚し家族を持って猫好きの彼の飼い猫は6代目になるが、みんな『雅子』という名前を付けている。彼の息子も大学で日本語を学んでいる。たった2時間の映画が人に人生に影響を与える・・・2時間にギュッと人生が凝縮されているからだと思う。

 国家というものは脆弱なものであると思う。ソ連国家は崩壊したが、今もみなロシア語をしゃべっている。民族・言語・文化は国家よりも強い。私は『日本映画を代表する存在になりたい。日本映画の李鳳宇』として。在日は日本の芸能にとても貢献している。矢沢永吉だって在日だし。
『在日』が特殊だとは思わない。ただ、『分断』は特殊だ。これは冷戦の結果で、現在は、過去に長くひとつの国家を作っていた民族が分断されたままなのは朝鮮半島だけだ。」

 その後の徐史晃さん(青年会神奈川)、呉知均さん(学生会中央本部)、キムジョンジンさん(留学生会)のパネル・ディスカッションでは、とても率直な意見が交換されました。キーワードとしてそれぞれ「歴史の再認識」「活」「公共空間」という言葉があがりました。

 現在の自分が存在するルーツ(根っこ&足跡)は歴史を再認識しないと確認されないこと・・・日本の学校では教えてくれないから・・・「せっかく日本に留学したのに、なぜ留学生だけで集まるのか」という疑問も出されるけれど、日本の女の子に失恋して自殺を図りそうだった留学生のカナダのお姉さんから連絡があって様子を見に行き何とか事なきを得たことがあるように「活かしあう」ことが大切だ、差別と闘ったたくさんの先輩たちの努力でわれわれの今があり、コミュニティーとしての公共空間をもっと広げたい等々・・・


 会場からは「自分の存在について、なんか、モヤモヤとしているけれど・・・」という声を受け、司会の金朋央さん(在日コリアン青年連合KEY)から「モヤモヤが、もっと大きくなっていくかもしれません」というような発言があり、受けていました。そう、青年期は自分作りの時期です。国籍を問わず、普遍的に「自分は何者か?」とモヤモヤするものなんですが・・・「自分は日本人でもなく、韓国人でもなく、第3の存在だ」というような発言も会場からありました。

 留学生の参加がとっても多かった印象です。三分の一ぐらいだったような。今、日本には1万5千人からの韓国人留学生がいるそうです。若い人たちの真摯な語りかけ、まじめな対話を聞いていると元気が出てきます。在日コリアンの存在は、この日本社会の文化の多様性と豊かさを担保してくれているのだ、とつくづく感じました。

 日本の若者たちにもっと呼びかけていただき、日本の若者たちが大勢参加していたら、と惜しい気がしました。在日の若者たちのこういう意見を同世代の日本の若者たちにも聞いてほしいですね。

 ただ、実情を知らない勝手な日本人の言い草で申し訳ありませんが、総連系の団体に所属する若者たちにも呼びかけるのは無理だったのでしょうか? 例の「和解の失敗」には厳しいものがありましょうが・・・李鳳宇さんも言ってらっしゃったように「特殊な分断」の現状はあっても、南北の若者たちの同じマダンでの発言があれば、どんなに「公共空間」が広がるか・・・と夢想するのですが・・・