釜山からの手紙&返事 08/3/8

 05年4月始め、私を「扶桑社教科書批判をして免職された日本の良心的教師」として韓国のメディアが一斉に報じた時、すぐ、私を釜山に招請して講演会を開催してくださったのが釜山市民団体協議会の金チ魯(ヒロ)理事長でした。その詳細は社会評論社『たたかう! 社会科教師』(P209,246)に載せていますが、その通訳をしてくれた金三生さんと金チ魯理事長宛に、先日、私を取材してくれた韓国SBSのドキュメンタりー報道が本日8日の深夜にあることを、『たたかう! 社会科教師』を同封して航空便でお知らせしたので、そのお返事が来ました。

 以下は、金三生さんが訳して送ってくれた金チ魯先生の手紙です。本当に頭の下がる謙虚で高潔な方です。75歳になられるクリスチャンの方で、とても品のある紳士です。

 ノ・ムヒョン前韓国大統領にお引き合わせくださるとのことで、「どうしたものか」と、いろいろな方にご相談しましたところ、多くの方から「お会いなさい」というアドバイスを受けました。アドバイスくださった皆様、ありがとうございました。

 また、弁護士さんは同意見の上に、以下の私の返事にあるように「それは、ちと、厚かまし過ぎるかな?」と思うようなことも「言ってみてください」と言われたので、お返事に書いてみたのですが・・・さて、今後の展開やいかに?(なお、私の母は、マリア様には比肩しうべくもない人なんですけど・・・)


<金チ魯先生から>

増田先生
 先生の貞潔な魂の香りがこもったお手紙本当にありがたく思います。

 初春の消息と共に訪れてきた先生の不屈の意志が老いた私に若い血を輸血してくれました。
戦いはその戦い自体に意味があるのであって、勝つか負けるかの問題ではないと私は思っています。何故かというと義のある戦いは私たちの存在を確認してくれるし、歴史にも記録されるからです。

 国家でも、また個人でも義に向かう意志はそれが大きくても、小さくても時間と、空間を超えて不滅に息づいているためです。

 増田先生、私は先生を知ったことが大きな幸運だと思っています。私が世の中を生きる間、いろいろな難事が起きるごとに、美しい香りが漂う魂の持ち主である同志が海の向こうの何処かにも一緒にいると思うからです。

 先生のお母様のご健康は如何ですか。お母様を愛してください。先生が苦境にあっている間、先生のお母様は十字架につるされたクリストをみる、クリストの母マリアの心痛を共にするもう一人のマリアだからです。

 増田先生、この春には、よい消息があるようお祈りしながらお体のほうもご自愛してくださるようお願いいたします。
                                                         2008.3.3

釜山から  金チ魯

追伸:何時か釜山にいらっしゃる時間がありましたら私が招待して、今は退任して郷里に戻っていらっしゃるノ・ムヒョン元大統領にお逢いする機会を作れますから、ご意向をお聞かせ下さい。


<私の返事>

金チ魯先生
 心のこもった、お手紙をいただき、たいへん、ありがとうございました。私のようなものに対して『同志』と呼んでくださることに、本当に感動してしまいます。なにより、私こそが海を隔てた国で先生のような高潔な方に出会えましたことを本当に幸せだと思っております。

 「義のある戦い」「義に向かう意志」! なんと素晴らしい言葉でしょう! この言葉に恥じない生き方をしたいと心から思います。

 また、私の母の心配までしていただき、ありがとうございます。実は、昨年末に脳梗塞で入院しましたため、父も高齢で、妹弟は仕事があるので、私が島根に1ヶ月帰って介護をしました。幸い、医者も驚く回復振りで、杖を突いて歩くことができるようになり、炊事も何とかできるようになりましたので、安心して、こちらに帰って来れました。

 それから、退任されたノ・ムヒョン前大統領にお会いする機会を作ってくださるとのこと、本当にありがたいです。ただ、退任されたといっても前大統領ともなりますと、ご多忙で、私のようなものに逢ってくださいますでしょうか?  この件を私の弁護士に相談しましたら「お逢いできるような機会があるのなら逢っていただき、裁判所に出す『増田教諭の免職処分を取り消し、教育現場に返してほしい』というような内容の陳述書を書いていただけないか、頼んでみてください」と言われました。

 お逢いできるだけでも畏れ多いように思いますが、前大統領の方に、このようなことをお願いすることができますでしょうか。

 春とはいえ、まだまだ寒い日も続きます。金チ魯先生も奥様も、どうぞ、ご健康にお気をつけてお過ごしください。

  2008年3月4日

               増田都子