■7.9集会での主な発言を紹介します
☆森正孝さん
増田さんの解雇を、他人事ではなく、深刻に受け止めています。歴史偽造主義者たちによる攻撃は、新たな段階を迎えています。彼らの目指すものは、日本国民の歴史認識を変えていくことですが、これまでの「啓蒙」の段階から、それに逆らう者を排除する、そういう段階に入りました。これを許すなら、大変なことになります。白色テロの時代、ファシズムに立ち戻る契機にもなりかねません。
この10年の動きをふりかえってみましょう。95年には、戦後50年ということで、村山談話が発表されました。ここで初めて、「侵略行為への反省とお詫び」が表明されたのです。その前の85年には、中曽根首相の靖国参拝に対して、後藤田官房長官が「A級戦犯への礼拝と誤解されかねないので、今後は行わない」とする声明を出し、93年には、河野洋平官房長官が従軍慰安婦問題に対して、日本軍の関わりを認めて「歴史の教訓とすべき」と表明しました。
こういう動きに危機感、嫌悪感を強めたのが、自民党などの反動議員で、彼らはこの年、「歴史検討委員会」なるものを作り、「大東亜戦争の総括」として、@侵略ではなく、大東亜解放の戦争、A南京虐殺や従軍慰安婦はなかった、B青年に誇りと希望を与える歴史教育正常化、C国民運動を展開する等々の4つ方針を提起しました。そこに講師として招かれたのが、藤岡、西尾、小林など、後の「つくる会」の面々です。
97年には、「つくる会」が作られ、公然たる反撃が始まります。こうして歴史偽造主義者が跋扈する10年が始まりました。彼らが最もこだわったのは、南京虐殺です。藤岡らは、当初「大虐殺」でなく「虐殺」だったと主張しましたが、やがて南京事件は「幻」だったと主張するようになりました。私は、最近中国に行って、改めて南京事件を取材し、新たな事実を知りました。南京事件で特徴的なことは、単に虐殺が行われただけでなく、レイプが大量に行われたことです。
大阪の女性教員たちが、12月13日から2ヶ月間南京に駐留した大阪の第16師団の生き残りの人たちに対する聞き取り調査をやっています。彼らはヒマでしたから、やることは、「調達」つまり物を奪うことと、女を奪うことでした。いまは90歳にもなる当時の兵士は、自分の妻のいる前で、「ヒルは飯炊き、夜はやらせる。こんなことは当たり前だった」と平気でしゃべっているのです。
南京での被害者の取材では、この時の体験からいまだに苦しんでる女性に会いました。その傷はPTSD,トラウマになっており、靖国参拝とかの報道を見るたびに、手が震えたり、不眠症になったりするのです。彼女たちには戦争はいまなお続いているのです。
いま中国側があげている日本の侵略戦争を代表する典型的な事件は、以下の6つです。
1.南京大虐殺、2.強制連行(旧満州の炭坑に200万人が連行されたといわれています。日本に連行されたのは、4万人です)。3.731部隊(細菌戦では27万人が被害を受けています)4,従軍慰安婦、5.三光作戦、6,アヘン戦争(河北、東北部で栽培、堕落させるため、また軍資金の捻出に利用しました)。
前ドイツ首相シユレーダー氏は、言っています。「繰り返し、繰り返し、真実が伝えられなくてはならない。そうでにければ、それを無きものにする勢力が現れる」と。過去に対する反省、清算が進んでいるといわれるドイツでも、歴史修正主義、歴史偽造主義が現れています。それでも、ドイツでは「繰り返し、繰り返し、真実を伝える」努力がなされているのです。
☆萩尾健太弁護士
「知らしむべからず、よらしむべし」は、中国の古代からの愚民政策です。まさに真実を知らさない、これがいまの東京都のやり方だす。7月下旬、増田さんの不当解雇問題を提訴しますが、何人かの弁護士で訴状を分担します。私は、教育実践を分担します。資料を調べれば、調べるほど、増田さんは、大変な努力で、すばらしいことをやってきたと思います。生徒のいつかの文章をご紹介しましょう。「紙上討論で、ほかの人の意見、考え方を知ることの大切さを学んだ」、「よく考えることの大切さ、事実を知ることの大切さを学びました。事実を知る権利は大切です」等々。まさに増田さんへの攻撃は、子ども達の「知る権利」を奪う攻撃です。共に反撃していきましょう。
☆鉄建公団訴訟原告団団長・酒井直昭さん
私たちの闘いも、も20年にもなります。いまの教育現場にかけられてる攻撃は、分割民営化が実行に移された87年4月1日に至る時期の攻撃を彷彿させます。この間の攻撃は、真綿でクビをしめるようなやり方でした。この間に、全国で200人の仲間が自殺に追い込まれています。さきほど前段の会議でも「全員がやれば処分が出ない」との発言がありましが、攻撃は個々の人に対する処分の形をとりますので、なかなか全体的な反撃が難しく、「見せしめ」の効果だけが現れています。
さきほど前段の会議でも、「みんなが君が代で立たなければ、誰も処分できない」という話がありました。「クビになるのを怖れるな」とまでは言えません。しかし、大勢の人たちが抵抗することで、権力側の見方も変わってきます。分割民営化に反対する闘いが始まった当時、「何で嵐が強いときにもそこへ飛び込むのか。嵐のやむのをタコツボで待っていたらいい」と言う人がいます。しかし、それはタコツボに一生とどまることを意味します。闘っていくしかないと思います。
☆東京都議会議員、伊沢けい子さん
連日、テレビでテポドン問題をやっています。出がけに見ていたら、石原都知事もフジテレビで「北朝鮮をやっけろ」と言っていました。これは、国内の問題を外にそらすためのものです。東京都は、こういう知事のもとにあります。増田さんの闘いは、こういう状況に対する重要な問題提起です。6月14日の議会でも、私の質問に、都教委は、次のように答弁しています。村山談話等については、「政府見解をコメントする立場にない」、増田さんの処分については、「法令にもとづいて慎重にやった」、扶桑社教科書については、「国の採択した教科書を誹謗するのは良くない」等々。まったくお話になりません。こんな知事では、どうしようもありません。私は、先日滋賀の県知事選の応援に行ってきましたが、ここでは勝利しました。「一部の利権のための無駄遣いを許さない」という県民の判断だと思います。来年春の闘いの準備を開始しましょう。
☆反リストラ産経新聞労組委員長・松沢弘さん
私は、産経新聞で労働組合を作り、委員長になったところ、94年に懲戒解雇されました。東京地裁では勝利したのですが、高裁、最高裁では負けました。裁判闘争を続ける一方、権利総行動などに参加し、背景資本のフジテレビを追及するなどしています。6月29日には、フジテレビの株主総会があり、増田さんにも株主として参加してもらいました。日枝会長は、女性がお好きと見えて、挙手した増田さんを指名したのです。ところが、増田さんの「扶桑社教科書・産経新聞批判」発言が終わると、顔が歪んでいました。
増田さんと初めて会ったのは、亀戸の団結祭りです。「私を誹謗・中傷する産経新聞は許せない」と言われました。その通りで、フジテレビとか産経新聞などは、なくなったほうがいいと思います。それでは、なぜ23年もそんなところで働いていたのかと言われるかもしれません。しかし、産経新聞で働いている労働者は、みんな右翼というわけではありません。だいたい、他社の新聞社の試験に落ちたり、ほかにいけないから、仕方なく働いている人が大部分です。鈴木邦夫はじめ本当の右翼は、ほとんど辞めています。残っているのは、「愛国心」を金儲けの手段とするインチキな連中です。こんな連中が増田さんを攻撃するのは許せない。労働組合を大きくして、経営姿勢を大きく転換させるようにしていかなくてはなりません。ともに闘いましょう。
☆予防訴訟原告団・都高教組合員・永井栄俊さん
さきほど国労闘争についてのお話がありましたが、すごく教えられました。東京の高校の現場は、80年代後半には、日本で最も民主的な運営がなされていました。しかし、その後だんだんと真綿でクビをしめるような攻撃がけられてきました。最大の攻撃は、都教委が組合の執行部を抱き込んだことです。私たちは、10.23通達が出た後、予防訴訟を起こし、いまや原告団は400名に達しています。いまは、以前には想像だにしなかったことがまかり通っています。私の職場でも、入学式を前に、生徒が「日の丸・君が代について考えよう」というビラを配布しました。ところが、都教委は、「扇動したものがいる」、それは私だと主張、入学式には5人もの都職員を派遣、私は5.6回にもわたって、取り調べを受けました。
都議会では、土屋が私を攻撃、彼のホームページを見ると、私に対する攻撃、増田さんに対する攻撃、日常的な人権侵害がなされています。古賀のホームページも同じです。増田さんは、真正面から闘っています。私は、このごろ権力は強いと実感します。これに対抗できる力をどう作っていくのか、ゲリラ戦ではなく、正規軍をどう作っていくのが、最大の関心事です。
☆板橋高校元教員の藤田さん
私の名前は勝久といいます。真珠湾攻撃のときに、父親が永遠に勝ち続けるという願いをこめて、つけたのです。ところが、先日の裁判では、負けました。「負け久」に変えようかと思います。都教委、検察、公安警察、裁判所、みんな完全に崩壊しています。先日は、公安の刑事が万引きをしたという記事が載っていました。莫大な血税を使い、何千人もいるのに、仕事がないのです。だから、万引きまでやるのです。政党機関紙配布で逮捕、有罪とされた堀越さんの場合は、公安が2ヶ月間も尾行して、鞄にカメラを内蔵して、取りまくっていました。全くの人権侵害、違法そのものです。
裁判所は裁判所で、「罰金10万円執行猶予」といった判決を出しています。罰金、しかも10万円の罰金に、執行猶予をつけるなんてこと、ありえますか。支配層は、国民生活の窮乏化をますます強めざるをえない。そこで社会不安への危機意識を強めています。だから、それに逆らう者は絶対に許さないというわけです。私の裁判では、弁護団が村瀬裁判長に幻想を持ちすぎて、だまされました。東京地裁は、全体の路線として、石原体制を翼賛していく姿勢を確認しているのではないかと思わざるを得ません。
☆杉並教組・長谷川さん
増田さんへの攻撃は、すべての教員にかかってくる可能性があります。私は、6年生の社会科で、「調べ」学習をやっています。生徒は、新聞やインターネットで、さまざまなテーマで調べます。いまの教科書では、韓国併合のこともまともに書いています。扶桑社の教科書の記述については、こどもたちは、「汚ねえ」と反応しています。これが普通のこどもたちの感覚です。彼らは、偽造を見抜く力を持っているのです。
杉並区教委の種村室長は、校長たちに対して、「採択された教科書(扶桑社の教科書)を使え、発達段階に応じた教育をしろ、教科書を批判するな」等々と指示しています。
しかし、教員としては、「真実ではない」と言わざるをません。去年、教科書採択についての意見書に、二人の教員が扶桑社教科書に批判的な意見を書いたところ、校長が勝手に賛成意見に書き直したので、その不正を告発しました。その報復として二人の教員は区教委から取り調べを受けました。いまのところ処分は出ていませんが、一人が大田区に飛ばされています。執行部のちの3人が区の外に飛ばされています。組合事務所も追い出しがかかつています。私は、断固闘います。大変な時代になっています。一人一人の思想・信条が問われる時代です。
|